同窓会、どうしようかい?

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「この本、今じゃほとんどの書店さんで取り扱いがなくて、お取り寄せしないと手に入らないんですよね」 「そうなんだよ。電子書籍も出てるんだけどね、(ぼく)はやっぱり、本は紙の本じゃないと読んだ気がしなくて」  真樹も紙書籍派なので、彼の話に笑顔で頷く。  そして書店員として、紙書籍にまだ需要があるのだと分かったことも嬉しかった。 「他に購入する商品がないようでしたら、このまま隣のレジでお会計させて頂きますね。――千九百八十円です。お支払いは現金ですか? クレジットとかキャッシュレス決済も使えますけど」  彼はクレジットカードで支払いをした。 「ありがとうございました!」  ほくほく顔で店を出ていく橘さんを、真樹も満面の笑みで見送った。 「――麻木さんのファン、また一人増えたみたいだねえ」  後ろから中年男性の――しかも出勤日には必ず聞いている声が聞こえてきて、真樹は思わず飛び上がる。 「わっ! 店長!」  声の主はこの書店の店主、川辺(まこと)だった。ちなみに彼と妻のまどかも、真樹がライトノベル作家の〈麻木マキ〉だと知っている。 「近くに大手の書店さんもあるのに、わざわざウチみたいな店で取り寄せして下さるなんて、何ともありがたいことだね。麻木さんの接客がよかったからだと僕は思うよ」 「いえいえ、そんな! あたしは特別なことなんか何も!」  大手チェーンの書店には接客マニュアルのようなものがあるのかもしれないけれど、この書店にそんなものはない。だから、真樹は自分なりに考えて工夫して接客しているだけなのだ。 「でも、橘さんが今度はあたしの本を手に取って下さったら、あたしも嬉しいです。たとえ偶然でも」
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