真樹の五年間、みんなの五年間。

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 男子はもちろんのこと、女子からもブーイングを受けたのには、岡原当人はもちろん真樹も苦笑いしていた。 (アイツ、うまい逃げ方したもんだな……。う~ん、でもコレはコレでよかったかも。あたし的には)  彼がもし「彼女がいる」と言っていたら、それを聞かされた真樹はどれほどショックだったろうか。 「ノーコメント」と言えば、彼もそれ以上突っ込んで訊かれることもないし、後に続く同級生達にもこれで第三の選択肢ができたことになるので、強制的に恋人の有無を言わされると思っていたみんなも、もちろん真樹もホッとした。 (……でも、あたしは逃げないけどっ)  真樹は今日、岡原に自分の想いを打ち明けるつもりでいるのだ。そのためには、彼のいる前でウソやごまかしなく、自分が今フリーであることを正直に言った方がいい。  ――一組の近況報告も、最後の一人が終わろうとしていた。真樹はこの次。二組の出席番号一番である。 『――えー、では二組に移ります。まずは、今や僕達の中で一番の有名人になった麻木真樹さん、ステージへどうぞ!』  田渕くんがそんな紹介をしたので、みんなが「わぁーっ!」と大歓声と拍手で壇上に上がる彼女を迎えた。 (わ……! あたし、みんなからめっちゃ注目されてる……!)  もともと目立たないうえに、人の注目を浴びるのが苦手な真樹にとって、今のこの状況は冷や汗ものだった。  デビューがきまった時も授賞式があったわけではなく、賞状が直接郵送されてきただけだったし――。  でも、ついさっき「逃げない」と決めた手前、このまま何も言わずにステージから降りるわけにもいかない。 (女は度胸(どきょう)! よしっ!)  腹を(くく)った真樹は、田渕くんからマイクを受け取ると、深呼吸をひとつして口を開く。 『はーい! 先ほど田渕くんからご紹介にあずかりました、ライトノベル作家の麻木マキでーす! 去年、念願の作家デビューを果たしました! でも今はひとり暮らししてて、家賃とか光熱費も自分で払わないといけないから、豊島区の本屋さんで働きながら本業も……って感じです』
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