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第二章
玄関からロビーに入ると、一人の先生が貼り出していた成績表を貼りかえる作業をしていた。私はその先生に声をかけた。
「山田先生」
「はい? ……えっと、誰だったかな? 卒業生、だよね。えっと」
私はその反応を当然だと思った。
「佐倉です」
「さくら……。あ、ああ! え? Sクラスにいた佐倉?」
山田先生は驚いたように言った。
「はい。ご無沙汰しています」
「うわあ、変わったなあ!」
私が山田先生と話していると、職員室から保科先生が出てきた。
「ああ、佐倉。来ていたのですね」
「保科先生! 知っていたんですか? 僕はびっくりしましたよ! あの佐倉がこんなに女らしくなるなんて!」
「山田先生、失礼ですよ~」
私の言葉に、
「すまんすまん。でも、本当に大人になったなあ」
と山田先生は頭をかく。
「他の先生方もまだいらっしゃいますか?」
保科先生を見て私が聞くと、
「佐倉がいた頃の先生……そうですね、移動された先生も多いですが……溝口先生はまだいらっしゃいますよ」
「あ~、社会の溝口先生」
「よく覚えてるな~佐倉」
目を丸くした山田先生に、
「皇学館(塾)の先生方は個性的な先生が多かったので、よく覚えていますよ」
と私は返した。
「溝口先生にも会ったらどうですか? 職員室にいますよ?」
保科先生の言葉はどこかよそよそしかった。
「あ~、そしたら挨拶しようかな」
当時、最も若かった溝口先生とは気が合って、年を超えた友人のような関係だった。私は職員室に入り、溝口先生に挨拶した。溝口先生も驚きと懐かしさの滲んだ顔をして再会を喜んでくれた。
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