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***
「え? 馨、待って待って。どういうこと? 彼氏に振られて?」
親友の加賀麻衣子が電話口で混乱している。
「そう。振られた」
「それで、なんで塾になんか行ってるの?」
なんで。それは。
「……保科先生に会いたくなったから」
はあ~と麻衣子が大きなため息をつくのが聞こえた。
「待って。もしかして、もしかしてだよ? まだ、保科先生のこと好きなわけじゃないよね? だって、馨、振られた彼と昨日まで付き合ってたわけでしょ?」
「うん……。それなんだけど」
「何?」
麻衣子が怒ったような声で促す。
「私が高三で付き合ってた彼、麻衣子知ってるよね?」
「話、急に変わるわね。覚えてるよ。あの色の白い、眼鏡の……」
「そう」
「……まさか。まさか、だよね?」
麻衣子の声が裏返る。
「……」
「って、保科先生に似てたから付き合ってたの?!」
「そう言ったら、麻衣子どう思う?」
私の言葉に、麻衣子は一呼吸おいて、
「あんた、親友だけど、サイテーよ」
と言った。
「やっぱり……そうだよね」
「ってことは、今回振られた彼も」
「うん。保科先生にどことなく似てた」
「はあ~」
呆れた麻衣子の声が聞こえてくる。
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