第一章

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*** 「え? 馨、待って待って。どういうこと? 彼氏に振られて?」  親友の加賀麻衣子が電話口で混乱している。 「そう。振られた」 「それで、なんで塾になんか行ってるの?」  なんで。それは。 「……保科先生に会いたくなったから」  はあ~と麻衣子が大きなため息をつくのが聞こえた。 「待って。もしかして、もしかしてだよ? まだ、保科先生のこと好きなわけじゃないよね? だって、馨、振られた彼と昨日まで付き合ってたわけでしょ?」 「うん……。それなんだけど」 「何?」  麻衣子が怒ったような声で促す。 「私が高三で付き合ってた彼、麻衣子知ってるよね?」 「話、急に変わるわね。覚えてるよ。あの色の白い、眼鏡の……」 「そう」 「……まさか。まさか、だよね?」  麻衣子の声が裏返る。 「……」 「って、保科先生に似てたから付き合ってたの?!」 「そう言ったら、麻衣子どう思う?」  私の言葉に、麻衣子は一呼吸おいて、 「あんた、親友だけど、サイテーよ」  と言った。 「やっぱり……そうだよね」 「ってことは、今回振られた彼も」 「うん。保科先生にどことなく似てた」 「はあ~」  呆れた麻衣子の声が聞こえてくる。
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