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第1話
魔王直属の四天王から声が届いた。
「ここは、我々がいただくぞ。」
重低音で発せられるその声には、街にいる者すべてを恐怖させる力があった。
犬は、恐怖で泡を吹き始めた。猫は毛を逆立て過ぎて脱毛した。
僕は、収まらない過呼吸を必死に食い止めるだけで精一杯だった。
「何やってんだよ。平気か? 」
「コマは大丈夫なのか? 」
「いいや、私からしてもあれはやばいと思った。」
コマにしては珍しく心配そうな表情を浮かべていた。どうやら僕を気遣って強気でいるらしい。
一段落している間もなく、中年の男の声が聞こえてきた。
「そこの君たち、気絶した者たちを起こすのを手伝ってくれ! 大丈夫、心配ない! 」
力のこもったその声は、僕を勇気付けてくれた。
「なんか気遣ってもらってばかりだな…」
僕は小さくそう呟いた。
急なイベントによって、僕の自信が、今にも崩れ落ちそうになっていた。
「おいレン、王様から呼び出されたぞ。」
王宮の警備をしている兵士が、急ぎで駆けつけてきた。
「僕ですか? なぜ? 」
「細かいことはいいから、早く向かいなさい!」
「わ、わかりました…。」
コマが駆けつけてきた。
「私もいくよ。」
「ありがとう。何がまっているのだろう…」
…………王都…………
「コマとレンが入ります。」
広々とした空間に、高級そうな装飾の数々が施された部屋は、この国の豊かさを物語っていた。
税金により造られたことを考えると腹立たしい気もしそうだが、王様のことを何故か憎めない。
「ご苦労だった。諸君には…」
ここで魔道士が駆け込んできた。
「報告です! 転生者がこちらに転送されます」
ぼふー…
光と共に、魔法陣が出現し、煙と共に、男が現れた。
「もう来たのか。予測より半日速いな。ちょうどよい。紹介しよう。」
王様がその名前を口に出す前に転生者がクールに呟いた。
「アジリンドンスだ。」
王様は、ペースを崩さずに、続けた。
「そうだ。アジリンドスだ。こいつと共に魔王討伐行ってくれ。」
干渉に浸っているかのようにアジリンドスは呟いた。
「長旅だったな…悪くない。」
王様は、自慢気に語った。
「アジリンドスは、魔王討伐の為に、急遽呼んだ。ステータスは抜群だから、心配する必要はない。」
レンは、率直な質問をした。
「なぜ僕なのですか? 」
「それは、なんか頼みやす…潜在能力が高いからだ!」
「その話、聞かせてもらったよ! 」
テツさんが、汗だくで駆けつけてきた。
「僕も連れて行ってくれ! 」
王様は応えた。
「まあいいだろう一緒に行くが良い。」
こうして、このパーティーが結成された。
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