1章 出逢いとは必然か、偶然か

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 魔石。それはヒトが魔法を使う上で媒体とするもの。  ヒトという種族は、魔石に魔力を通し魔法言語スペルを唱えることで、魔法式ー世界を書き換えるものーを使用できる。魔法式は世界の理に干渉し、火を出したり水を操ったりできるのだ。  つまり、魔法が生活を支えているヒトにとって魔石は必須である。  そして当然、魔石にもランクがある。良いものであるほど魔法式は組み立てやすくなるからな。大体が小さく濁っているもので、色が透き通るほど、大きさが大きいほど、希少価値は高くなる。  ちなみに魔力というのは各個人に色がある。青、赤、緑、黄.......などなどだ。  色によって魔法式との親和性が異なるのだ。  俺はお金を持っていない。  しかし、俺は精霊。それも結構上位な存在なのだ。  そのために、作れてしまうのだ。魔石がっっ!  すごいでしょ!どやっ!    しかも、元は俺の魔力である。作られた魔石の品質は低いわけがない。  というわけで十分にお金の代わりになると思うんだけど.......。 「これなんだけど......。どう?」  そう言ってポケットから出したのはさっき作ったばかりの魔石。色は青色である。 「ええ、別に構わないけど......でもいいの?この魔石結構良いのじゃないかしら?あまり詳しくない私でも上質な物ってわかるわよ?パン3個じゃあ釣り合わないわ。」  .......え、それで?これでも品質は相当抑えたよ....。うーむ、ヒトの世界って難しい....。  釣り合わないって言われましても...。これしか作ってこなかったしなぁ〜。 「じゃあパン以外に何か貰えない?さっき言った病み上がりの子に食べさせられるやつ。」 「ええ、勿論よ!ちょっと待っててね....。」  そう言って店の奥に奥さんが行ってしばらく。 「っと、ごめんなさいね。これぐらいしかなかったわ...。昼食の残りなのだけど.....。芋とにんじんの野菜スープよ。栄養は十分だと思うわ。でもさすがに残りものじゃだめよね....。」  見せてくれたのはホカホカと湯気のたつ温かいスープ。ふわりと良い匂いが漂う。  え...、いいの?こんなもの貰って....。 「全然良いんだけど....。良いの?逆にこんなもの貰っちゃって...。」  当惑しながら聞くも、 「そんなものでいいなら勿論!物々交換は等価交換が基本よ。貴方の魔石には充分な価値があるわ。」  白パンを包みながら優しい笑顔で言われてしまった。 「はい、じゃあ白パン3個とスープでこの魔石一個ね。良いかしら?」 「ああ、俺は良いよ。」 「私も良いわ。毎度あり!!あ、そうだ。鍋はまた今度返してね。」  そんな言葉に見送られ、チリンチリンとベルが鳴る音と共に店から出た。  ..........本当にいいヒトだったな....。こんなに貰ってしまった。  わざわざ温め直してくれたであろう鍋はまだホカホカと温かい。 「シェフィに早く食べさせよう。」  俺は近くの路地裏に入り、シェフィの待つ屋敷の庭に転移した。
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