1章 出逢いとは必然か、偶然か

1/7
前へ
/8ページ
次へ

1章 出逢いとは必然か、偶然か

[1、典型的な始まり] 俺はある日、子供を見つけた。  ◇◇◇  ふんわりと頬を撫でていく風。柔らかに日差しを注ぐ太陽。遠くから流れてくる人々のざわめき。  うう〜ん、今日もいい天気!  鳥さん今日もお元気?いや〜相変わらずたっかいとこ飛んでるねぇ。  ああ〜、こんなにポカポカしてるとさぁ、なんというか、眠くなってくるよねぇ〜。    今日も今日とて特に何をするでも無く、ふわふわ風に揺られながら、このままもうひと眠りしよっかな〜、なんて思っていると、微弱ながらも青い、まるで海の色をガラス玉に閉じ込めたような魔力を感じた。  おおっ、珍しいなぁ!こんな透き通った色!えっ、見に行こうっと!  昼寝の気配はどこへやら、一気に興味が傾く。  ワクワクする心を抑えて、ゆっくり下降。スーッとそこに近づく。塀を越し壁を通り抜け入ったそこは、狭い部屋だった。質素な飾り付けがされていて、壁はライトグリーン。タンスと勉強机と椅子、それに小さな棚とベットが置いてある。 「ええっ!暗くない?」  窓にはカーテン。日差しが遮られて、うわっ、空気が澱んでいる!思わず声が出ちゃったんだけど。 「…………、誰?誰がそこにいるの?」 「えっ?」  ここにいるの?えーと、声はベットからかなぁ。ゆっくり近付きベットの上を覗き込むと……、 「あっ、この子だ!」  透き通った海の色を持ってる子。おお〜、近くにいるだけで気分が良くなるな。 「誰?」  魔力と同じ、透き通ったパステルブルーの瞳をこちらに向ける、サラサラ金髪の男の子。天使みたい。 「君、俺が見えるの?」 「え・・・・・・、うん。見える、よ。っゴホっゴホ。」 「ちょ、ちょっと!大丈夫?」  明らかに体調が悪そうだ。綺麗な眼が熱に潤んでるし。 「俺のこと、しっかり見える?声も聞こえる?」 「うん。」  そうか・・・・・・、ならばっ! 「ちょっと触るね。」  ペトリ。おお、この姿のままヒトに触れられたよ!って熱っ!熱すぎだろ! 「ねえ、君、熱くない?」 「うう、熱いよぅ。・・・・・・喉渇いた。」 「そうだよな!ちょっと待ってろよ!」  こうしちゃいられない。こんな小さな子が苦しんでるんだ!お兄さんが助けないと!    ドアを擦り抜け、廊下を駆け抜けて、入れ物を探す。どこだ、水入れ。出てこい!  強く念じた甲斐あり、2つ程先の部屋に銀色の入れ物を発見!  よし、丁度いい大きさだ。これでいいだろ! 「うー、浮け!」  念じて指で指図すると銀色の入れ物は宙に浮く。さあ、戻ろう!  そのまま開いていた窓から飛び出し、家の外をぐるっと回ってさっき入った男の子の部屋の窓まで直行。入れ物は壁とか抜けられないんだ。  窓の前にて再び指を指して念じる。 「開け、開け!」  バタッと音を立てて窓が開く。 「おーい、君、起きて起きて!」 「ゴホッ、ゴホッ、えっと、さっきの、人…?」 「そうだよ!さあ、喉が乾いたんだろ?」  コクリと頷く男の子。 「ほら、これ持って!」 銀色の入れ物を男の子が持ったのを確認して〜の、 「清涼なる癒しの水をここに!」  それっ!  何もないはずの空中から光る水が出てくる。それは、キラキラ太陽の光を反射しながら入れ物に溜まっていく。 「さぁ!これ飲んで!」 「わぁ、すごいね。……でもいいの?僕がこれ飲んでも。」 「もっちろん!君のために出したんだ。それ飲んでよくなってくれよ。」 「・・・・・・うん!」  ごくごくと水を飲む綺麗な子。余程喉渇いてたんだな。一気に飲んじゃったよ。 「ありがとう。お兄さん。」  そう言って俺に入れ物を差し出した、さっきまで苦しそうに唸っていたその子が、トロンと潤んだ目も、枯れた声も、グッタリした体もそのままだけれど、まるで花が咲いたように笑ったんだ。  それを見た俺は思わず笑顔になっちゃって、 「どういたしまして」  そう、返答したんだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加