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「うぅ〜ん.......。」
まだ眠そうな目をゆっくり開いていく男の子。
……やっぱり綺麗な目だなぁ〜。
「あっ、目、覚ました?どう、元気になった?」
「えっ、あっ、えっ?」
「俺のこと覚えてる?」
忘れてないよね?
「.........あっ、うん!お兄ちゃん!」
「うん、そうだ!それで、体調は?」
目をパチクリさせて手を持ち上げる。
「大丈夫!僕、元気になったよ!」
ああ〜、可愛い。
「そうかそうか〜。良かったよ!」
「ありがとう!お兄ちゃんのおみず飲んだらね、すっごいよく寝れたの!でね、えっとね、体が軽いの!」
ちょっと舌足らずに、辿々しく話す子。
「そりゃ良かった!それでさ、すごい気になってることがあるんだけど........。」
「なあに?」
こてっと首を傾げる。
「あのさ、大人のヒトって会う?」
「大人のヒト?えっとね、シャリーっていうお姉ちゃんがね、来てくれるよ。」
「シャリー?」
「うん!茶色の髪のおねーちゃん!たまに来る時に美味しいご飯を持ってきてね、ご本を読んでくれるの。」
「そうなんだ〜。前はいつ来たの?」
「えっとぉ〜、4日前?」
こてっと再び首を倒す。
俺は何となく分かった。俺だってそれなりに長く生きている。
埃の積もった屋敷。熱の出た子供がひとり。痩せこけた頬。折れちゃいそうな腕。それに、たまにしか大人が来ないということ。
…………これだからヒトって。
まあ、俗にいう育児放棄。この子は周囲にとって邪魔なのか。
........望まれない子。
湧いたのは、同情か、憐憫か。..........可哀想だな。
だったらさ、俺がお世話してもいいかな?育ててもいいかな?
この数日、ヒトにとっても瞬きのような短い間。
どうやら俺は、この子に情が湧いたみたいだ。
笑顔が眩しくって、この子の空気も好きだし。きっと魔力の相性もいいだろう。
まあ、ヒトの子と俺たちは違うからいつかは離れる必要があるけど、その時まで俺が側に居てもいいだろ?
「なあ、君。俺もここに暮らしていい?」
「えっ?」
「俺、君の魔力が心地よくって好きなんだ。どうかな?ここにしばらくいていい?」
「お兄ちゃん、僕と一緒にいてくれるの!」
「うん!どう?」
どうかな?嫌じゃないかなぁ。
「………っうん!もちろん!お兄ちゃん!」
よしっ!
「僕はね、シェフィールっていうの。お兄ちゃんは?」
…………名前、名前かぁ。久しぶりに尋ねられたな。
まあ、この子に呼んでもらうなら、これかなぁ。
「俺はリィ。精霊のリィルだ。よろしく、シェフィ!」
◇◇◇
こうして俺ことリィルは、可哀想な子、シェフィールを育てることにした。
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