1章 出逢いとは必然か、偶然か

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  [2、食育、大事]  早いもので、俺があの子、シェフィを育てると決めた日から一週間がたった。  ただ今の時刻、夜の9時。俺は屋敷の厨房にいる。シェフィは先程寝かしつけてきたところだ。.......まあシェフィは寝かしつけるなんてしなくても7時半ぐらいになると自主的に寝てくれるいい子だがな..........。  シェフィが寝た後は、シェフィの寝顔を眺めたり、部屋の片づけをしたり、寝顔を眺めたり、体調を確かめたり、シェフィの寝顔を眺めたり.......とまあ色々やって、今俺は食堂で羽を休めている。  それにしても.......... 「ああああ……。疲れた。」  大きなため息を吐きながら一人愚痴る。 「知らなかった……。ほんっと知らなかったんですけどぉ……。」 ううう…。頭を抱えてしまう。  そう。俺は知らなかったのだ。 「ヒトの子の世話ってこんな大変なのかぁ……。」  ヒトの子育ては非常に大変だ!ということに。  俺は気付かなかったのだ。ヒトの子育ては精霊と違うということに。  よく考えてみろ。根本的にヒトとは生態が違うんだ。子育てだって違うに決まっている。  そもそも精霊は生まれた時から自我と知識を持つ。そのため周りの手を借りずとも生後すぐに自立できる。生きていける。子育てなんて、名前を付けてあげる、自己紹介、力の便利な使い方を教える、程度なのだ。もはや子育てって言えるのかも怪しいほどやることがない。っていうかまず子育てっていう概念がある精霊のほうが珍しいと思うんだ…。  大体さ?食事も睡眠も不要な種族なんだよ。当然料理なんてやったことないに決まっている。  そんなんだから、俺はこの一週間、大量の”今までやったことのないこと”に直面する羽目に陥っていた。 ◇◇◇ 「ううぅ~ん、どれどれ?」  ぺたりとシェフィの額に手を当てる。  熱は……、まだちょっとあるな。でも大分よくなってきてる。出会い頭のあの沸騰する様な熱さではない。  俺はやっと目覚めたシェフィの熱が引いてきていたことに安堵していた。 「どう?まだ怠い?」 「……うん。ぐったりしてるのが治らないの……。」  ふらふらする。そう溢すシェフィの顔にさっきまでの笑顔はない。 「そうかそうか。じゃあほら!」  えいっ!、とシェフィを魔法で押してベットに寝転がらせる。  .........ちゃんと力加減はしたぞ?ゆっくり、ゆっくりやったとも!! 「しっかり寝て治すんだぞ?」 「……っうん!」  ふわっと笑って布団を両手で持って口元を隠すシェフィ。……なにそれ可愛い。  ちょっとキュンとした俺は枕元に移動してシェフィの頭をなでなでする。……この時俺は、シェフィが元気になったら髪の毛をふわっふわのさらっさらにすることを決意した。  二人で顔を見合わせて笑っていると、キュルキュルキュル~という音が聞こえた。 「ん?」  音源を見やると、そこはシェフィのお腹だった。 「……シェフィ、お腹すいた?」 「……うん。」  シュンッと肩を落とすシェフィの姿。 「……そうか。」
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