1章 出逢いとは必然か、偶然か

6/7
前へ
/8ページ
次へ
 ◇◇◇  「ねえねえ、知ってるかい?あそこの娘さん!」  「お前、まぁた賭け事でお金すったのかい!」  「あそこの料理絶品なんだよ。今度一緒に行こうぜ!」  「おいおい、男爵家の御令嬢が結婚するってよ!!」  多くの噂話が行き来するここはヒトの暮らす街。  俺はシェフィのご飯調達のため、ヒトに姿を変え街中を訪れていた。  先程俺が閃いたことは至極単純である。つまり、作れないなら買えばいい!!  いやぁ〜、ヒトの暮らしに慣れてないからそこに辿り着くまでが遅かったよ〜。  そうだよねぇ、何も俺が作る必要がない。 「そこのお兄さん!うちの焼き鳥は美味いよ!一本どうだい?」  .....焼き鳥かぁ〜。うう〜ん、病み上がりのシェフィには重いよねぇ〜。  人混みをかき分けふらふらと市や店を物色していく。  どこがいいかなぁ.....。  鍛冶屋、靴屋、焼き鳥屋、果物屋、書店、服屋.......。  店っていろいろあるんだなぁ.....。そういやシェフィの着ていた服は着古していそうだったし、2着ほど動きやすそうな普通の服が欲しいなぁ....。  こちらの店は果物か。果物はシャキシャキしてて美味しいよね。りんごとか、葡萄とかな。俺もよく食べるし。まぁ買う必要はないけども。  何軒かシェフィに必要そうな物が売っている店を記憶に留めつつ.....。 「ここかな....?」  大体徒歩10分ほどの場所にあった大通りに面している一軒の店に決めた。  パン屋、「蜂蜜堂」 「こんにちはぁ〜。」  チリンチリンと軽やかな音を立てて扉が開く。  中は素朴な感じ。お客さんも2、3人ほどいるね。さて店主さんは....っと、 「ご婦人がここの店主さんですか?」  俺の挨拶に、いらっしゃい!と気持ちいい挨拶を返してくれた女の人。歳は30ぐらいか? 「いいえ、違うわ。うちの旦那が店主なのよ」  見るからに優しいヒト。魔力の濁りも殆どない。きっと夫婦仲は良好で日常に満足しているのだろう。 「そうなんだ〜。奥さん、聞きたいことがあるんだけどいい?」 「ええ。何かしら?」 「今俺、病み上がりの子をお世話してて。でさ、その子が食べやすいパンってある?」  正直言って俺はどれがどんなパンか全く分からないんだ。シェフィは大体5歳ほど。ヒトの子は繊細だからやっぱ良し悪しあると思うんだ。折角ならいいもの、特に子どもの体にあうものにしたい。 「病み上がりの子....あー、じゃあそこのパンはどう?」  ほらここのだよ。そう言って指を刺したのはふわふわしてそうな白いパン。 「これ?」 「ああ、そう。白パンよ。薄ら塩がかかっていて体にいいのよ。パン自体がふわふわしているから幼い子どもも食べ易いし、なにより美味しいわ!そこらのパン屋じゃ手に入らないうち特製のパンなのよ!!」  ほうほう....。調べても特に問題あるようではない。奥さんの説明通りならシェフィも食べやすいだろうな.....。 「少し味見出来ない?」 「味見?勿論よ!」  そう言って、奥さんは店の奥から持ってきたパンをひとかけら俺にくれた。 「むぐ.......、うん、美味しいな!!十分に美味しい!」 「そうでしょ?うち自慢の味なの。」  いや、ふわふわした食感と僅かな塩味がすごく良い。食事なんて滅多にしないが、これは俺でも美味しく食べられるな。 「奥さん、これ買いたい!」 「毎度あり!いくつ欲しい?」  あ〜っと.....シェフィのご飯3食分だから.....。 「3つ頂戴!!」 「は〜い!」  奥さんが手際良く袋に詰めてくれる。ってそうだ!! 「ねえ、奥さん。」 「何?」 「俺お金を持ち合わせて無くて......。代わりに魔石での支払いでいい?」  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加