Crossroads

8/10
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「良かった。ナナ……。萌絵ちゃんが来る前に窓をあけて掃除してたら、急に飛び出して行っちゃって。しばらく庭を探したけど見つからないし、もしかしたら外に行っちゃったかと思って、慌てて探しに行ったの。萌絵ちゃんが来る時間だったのに、ごめんね。ナナが心配で……」  なるほど、萌絵ちゃんがインターフォンを押した時には沙良ちゃんは外に行ってて、猫はまだ庭に潜んでたって事か。  僕の思考を読んだように、横で岡部さんが頷く。 「全然。ナナちゃんは外を知らないんだし、真っ先に探して当然よ」 「うん、……でも、まさか萌絵ちゃんが見つけてくれるだなんて思わなかった。何回か画像見せただけなのに、ナナに気づいてくれたんだね。本当にありがとう」  涙声で感謝して来る沙良ちゃんの肩越しに、萌絵ちゃんの辛そうな顔が見えた。自分のついた嘘が、きっと今萌絵ちゃんを苛んでる。  もどかしい痛みのようなものが僕の胸にも溢れ、堪えきれずに声を張り上げて弾き飛ばした。 「そうなんだ、偶然あっちの通りでこの子に呼び止められて、友達の猫を助けてくださいって懇願されたんだよ。見たら犬に吠えられて木の上に追い詰められた猫がいるじゃない。僕らは協力して乱暴な犬を押さえつけ、この子はゆっさゆっさ枝を揺らし、飛び降りて来た猫を見事キャッチしたんだ」  今だけ共犯者になってあげる。  大丈夫。  嘘の取り扱い方を、そうやって知って行けばいい。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!