名もない希望のペンダント

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「ねえ、それをお姉ちゃんにくれないかな。 ほら、ビスケットと交換しよう。ね?」 「ヤダ……ダメ……」 「お願い。お姉ちゃんそれが必要なの」 「ダメ」 「あとひとつで、新政府に申し入れできるのよ。望みが叶うのよ。そしたら、あなたにも食べ物たくさんあげられるわ。だから、それをちょうだい!」 「ヤダ」  少年はかぶりを振ると、森の奥へ走っていった。 「待って」  紗良は追いかけた。相手はまだ子供だ。すぐに追いついた。 「お願いだから譲って。ほら、これ、ビスケットと水よ。全部あげるから」  少年はラピスの雫を抱きしめるように身を縮ませる。
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