名もない希望のペンダント

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くそう……くそう……  紗良は地面を叩いた。拳をにぎり、何度も叩いた。  この世界に希望なんてないじゃないか。あるのは絶望だけ。どれだけ誠実に生きようとも、見えない壁の前に、人々は涙を飲むしかないのだ。  新政府が作りあげた偽りの希望。  人々はその手のひらで踊らされているだけだ。  薄れゆく記憶の中で、生きることを諦めようと思った。  紗良はポケットから、ひとつまみの薬を取り出した。血のように赤いカプセル。マスターからもらったものだ。  飲めば、苦しまずに死ぬことができる。 「もうなんの未練もないわ」  紗良はあごを震わせ、泣きながら薬を口元へ運んだ。  と、その時だった。
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