名もない希望のペンダント

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「まあね。たまには酒でも飲んで気分を変えないとね」 「でも、こんな夜中に女が一人で出歩くなんて危険だろう。はいよ、これ」  マスターはウイスキーの入ったグラスをテーブルに置いた。 「マスター。わたしを見くびっちゃダメだよ。ふふ」  紗良は腰に添えた特殊警棒をトントンと叩いた。 「そうでした、そうでした。剣術のプロに大きなお世話だったな」  そういうこと、とうなずくと紗良はグラスを掲げた。一口飲むと、胸がカッと熱くなった。アルコールの魔力に脳がしびれていく。美味い――。  感傷の海におぼれていく。
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