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寂れた世界だ。
東京という名はすでにない。日本という概念もない。今はT―01という記号化されたナンバーで呼ばれている。
侵略者ジャダに支配されたこの世界は、闇そのものだった。
電力供給の乏しい夜の時間帯。紗良は廃墟の片隅で朝を願っていた。
紗良が三日月を見つめたとき、不穏な風が通り過ぎた。
「おい、あそこに女がいるぞ!」
廃墟の外から声がした。男の声だった。
紗良は振り返る。二人組の男と目が合った。どう見ても善人ではない。卑しい顔つきは性根の曲がったドーベルマンのようだ。
男たちは紗良を狙っている。
紗良は『ラピスの雫』をポケットに隠すと、走り出した。
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