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「安心してください、二分だけ戻しました」
医者はずっと同じ動きを続けている。『カサッカサッ』と衣服が擦れる音が続く。金原仙人はフィリピン人のスタッフを手招きした。さっと額に手を当てた。
「飲食物を届けて欲しい。それからマスクを二つ。いいね逃げられないからね」
十五分の転生を仕込んだ。逃げてもここに戻ってしまう。スタッフは逃げた。仲間に報告するが笑って相手にされない。話している途中で逆戻り。
「どうしたの?逃げられないって言ったでしょ。諦めてこのメモ通りを運んできなさい」
スタッフは目の当たりにした事実から逃げられないと諦めてメモ通りの飲食物を運んだ。
「蕎麦なかったんだ?」
スタッフは頷いた。
「あなたは一体誰です?私達を助けてくれるのは嬉しい。だけど常人の仕業とは思えない。正直信じていいのかどうか不安です」
則夫が本心を伝えた。
「ええ確かに驚いたでしょう。あまりこういう出遭いから始まることはないんですけどね。今回は異常でしたから私も少し乱暴をしてしまった。どう見ても誰が考えても、彼等に非がある。目の前の非を素通りするとこの力を失いかねない」
正子が金原仙人の名刺を則夫に見せた。
「仙人?」
「ええ、二年前から活動しています、金原です」
「あの窓の下は海ですよ、どうして入れるんですか?」
則夫は不思議でしょうがない。
「説明は難しい。転生の繰り返しで移動するんです。自分の過去未来、人、動物、植物、生がある物なら全てそこへ転生します。それが特技ですかね」
ハンチングを取って頭を掻いた。ボロボロと大きなフケが床に落ちた。
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