8人が本棚に入れています
本棚に追加
【白井 典子/四時十分--】
突然姿を消した稔ちゃん、何故か保護室から出て来れた女性。
稔ちゃんがどこにいるのか、考えてみるとすぐに分かった。
目の前にある保護室の扉は、壊されることなく開いている。どうやって番号を知ったのかは分からないけど、解錠することができてしまったのである。
部屋の中に入ると、寝台の近くに倒れている稔ちゃんの姿を見つけた。
「稔ちゃん……」
近寄って無事を確認する。どうやら、意識を失っているだけのようだ。
安心するも、同時に悲しくなる。
━━私は稔ちゃんを逃がしてあげられない。
ギシ……ギシ……
保護室の扉の前まで来た時には既に、その音は聞こえてきて、段々と近くなっていた。
保護室から出るには女性が歩いて来ているであろう通路から戻るしかない。この部屋に隠れられる場所なんてありはしない。
私にできることは、一つしか残っていない。
私は保護室を出ると、扉を閉めて鍵を掛けた。そして扉を背に通路の先を見つめる。すぐに闇の中から女性が姿を現した。
━━悔しいな、あの子たちともっと一緒に……
女性の手が私に触れた瞬間、視界が黒く染まっていった。
光を奪われ、暗闇へと堕ちてゆく――
外に連れ出したのは誰?
何から逃げていたの?
誰を捜していたの?
誰と話していたの?
何処で何をしていたの?
そういえば……
ワタシハ、ダレ?
最初のコメントを投稿しよう!