第5話『突然の帰郷。美歩、悲しみの再会』

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第5話『突然の帰郷。美歩、悲しみの再会』

○市内・汽車通り    広がる青空。その下に新緑の街路樹。 通りを汽車や自動車が行き交う。新聞社の側の歩道を歩く私服姿の坂東響紀(16)、若柳鳴(16)、山村沙羅(16)。その横には古びた病院の建物。    大きく伸びをする坂東。 坂東「すっかり春だね」 沙羅の声「響紀、見て! 私たち記事よ」    新聞社前の掲示板に貼られた新聞。記事に千々(ちち)演舞の様子と『帯屋町高校地方部(じかたぶ)、またも演舞に勝利!』の活字。 坂東「四連勝、か」 鳴「勝ち続けたら、椿姫みたいになれる?」 沙羅「それはどうかしら」    少し浮かない顔の坂東。写真の隅にバネが映っている。 沙羅「どうしたの? 響紀」 坂東「あの時のバネ、何だったのかなって?」    ×  ×  ×    フラッシュ。    千々演舞。CHC-3Bと一緒に宙を舞うバネ。    ×  ×  × 沙羅「考えても仕方ない。とにかく次も勝つ!」    こぶしを突き上げる沙羅。 鳴「勝つぞ!」    真似する鳴。つられて笑顔になる坂東。 すみれの声「(突然)坂東くん!」    見上げる坂東。古びた病院の二階から笑顔で手を振るパジャマ姿の花柳すみれ(43)。 坂東「美歩先輩のお母さん?」 驚いた坂東の顔。 ○古備田(ふるびた)病院・外観    壁にひびが入った外観の病院。『古備田病院』の看板が傾いている。 ○同・病室    ベッドに座るすみれ。    パイプ椅子に座る坂東、鳴、沙羅。    部屋の壁や床がうす汚れている。 坂東「転院したんですね」 すみれ「そうなの。入院代少なくしたかったから。美歩に負担掛けたくないしね」 坂東「大丈夫です。必ず美歩先輩が治してくれます」    頷くすみれ。 すみれ「聞いたよ。地方部の活躍、すごいね。その子が美歩の後輩?」    鳴を見つめるすみれ。 鳴「(沙羅へ)ねえ、美歩って誰?」 沙羅「地方部の前部長。鳴の前の踊り子よ」 鳴「ふーん」    と興味なさそうな鳴。鳴を優しそうに見つめるすみれ。 すみれ「そうそう。坂東くんに渡すものがあったの」    すみれがベッド横の床頭台の引き出しを開け、写真を取り出す。
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