第5話『突然の帰郷。美歩、悲しみの再会』

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   すみれの手に写真。病室に踊り子衣装の坂東(15)、花柳美歩(18)、パジャマ姿のすみれ(42)。開いた窓の外に地方機(じかたき)OBI-1の顔が見える。 坂東「菜園菜(さえな)演舞の時の……」 すみれ「この写真の美歩は、すごく幸せそう」 坂東「僕も先輩と一緒に踊れて楽しかったです」 すみれ「今の美歩は、私の病気を治すために医者になるって頑張ってる。でも私は、あの頃の美歩に戻れたらって、少しだけ思うんだ」 坂東「……」 すみれ「美歩にはもう会った? 今日、土佐に帰って来るの」 坂東「美歩先輩が!」    急に立ち上がる坂東。 すみれ「高校に寄るって言ってた。会いに行ってあげて」    うなずく坂東。 ○帯屋町高校・正門前    車が行き交う通り。歩道の人影はまばら。    正門に立つ花柳美歩(19)、校舎を見つめている。美歩の左手にはキャリーバッグ。右手には封筒。    (高校の)郵便受けに封筒を入れようとする美歩の手。 坂東の声「美歩先輩!」    振り向く美歩。歩道に坂東が立っている。 美歩「(驚き)響紀……」    美歩、とっさに右手の封筒を背中に隠す。    駆け寄る坂東。 坂東「先輩!」 美歩「久しぶり」 坂東「先輩に話したいこと、いっぱいあるんです」    美歩、目を伏せながら、 美歩「私も、話したいことがあるの」    美歩、坂東の後ろに沙羅と鳴の姿を見つける。 美歩「ちょっと付き合ってもらえない?」    美歩がキャリーバッグを手に歩き出す。    美歩に続く坂東。 ○菜園菜商店街(夕)    片側一車線の道路。両側にアーケード付の歩道が並ぶ商店街。商店街の入口には、門形のゲートがあり、『さえな』の看板が吊り下げられている。    商店街の歩道。立ち止まり、話をする坂東と美歩。    鳴と沙羅が、離れた建物の陰に隠れて、様子をうかがう。 美歩「懐かしい。何にも変わってない」 坂東「ここで演舞したんですよね」 美歩「そう。私と響紀の二人でね」 ○(回想)菜園菜演舞場(夜)    照明に照らされた車道。ぶつかる地方機OBI-1とSEN-3。車道、笑顔で踊る美歩。
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