354人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
第16話
それから二日後。午前中のレッスンが終わり、午後からはウィチューブ用の撮影をする。ウィチューブは毎週更新してるけど、撮りは二週分を一度にやる。
結構面倒なんだけど、こっちの収入も馬鹿にならないんだよね。このキッチンスタジオのローンを払い終わるまでは頑張らないと。
「この角度でいい? じゃあ、行くわよ。スタート!」
撮影してくれるのは唯一のスタッフ、舞だ。朝から気まずい雰囲気だったけど、仕事となるとしっかりやってくれる。やっぱり頼りになるよ。
「家の庭やプランターにバジルやイタリアンパセリがあると意外に便利ですよ。こんなふうに散らしてあげると、豪華ですよね」
「カット! いいんじゃない?」
「はあー。終わったぁ。ありがとう。じゃあ、これ食べようよ」
撮影が終わると、二人でその日に作ったものを食べる。沢山ある時は、舞に持たせる時もあるんだ。
照明やらを片付け、僕らはその日のメニュー、パスタとブルスケッタ、サラダ等々を少し早い晩御飯として食べる。
「で、沢城さんはノンケだった?」
一口食べてすぐ、舞の容赦ない質問が僕の喉を塞ぐ。
「え……と。すみません。舞様の仰る通りでした」
「はあ……」
舞はわかりやすく大きなため息を吐く。
「あんた、ホントに懲りないね。で? 襲われちゃった?」
僕が答えられず黙っていると、再び大きく息を吐いた。
「で、でも最後までやってない! 美原さんとも最後まではいってないよ! 最後までしたのは鹿島さんだけで……」
「最初も最後もあるか! ド阿保!」
テーブルをドンと叩かれた。ですね。ごもっともです。
「あのね。別にあんたが誰と寝ようと、どんな恋愛しようと構わない。問題なのは、相手が生徒さんだってことだよ? わかってるよね。そこ」
はい。わかり過ぎるくらいわかってます。
「この際だから、鹿島さんとのこと公表しちゃったら? 付き合ってますって」
「あ、それいいかもしれないな」
「冗談よ!」
ううっ、ごめんなさい。
「とにかく、ここまで成功したのは、あんたの料理はもちろん、そのイケメンすぎる容姿もあるんだから。女性ファンを嘆かせないでよ」
結局そこか。でも、お料理って料理そのものも見た目は大事なんだよね。綺麗な色どりや盛り付けで、美味しそうって思う。そこからもう、食事って始まってるんだ。
だから、料理を提供する側も、何も容姿端麗でなくてもいいけど、やっぱり清潔感や雰囲気って大事だと思ってる。
僕はキッチンに立つとき、大抵白シャツにスキニーパンツ(デニムが多いけど)、アクセなんかは付けずにシンプルにしてるんだ。エプロンも無地が多い。ゴテゴテしない方がいいと思ってる。
そんな気遣いも認めてくれてるなら、それはそれで嬉しいんだ。僕を含めてのお料理だからね。
なんて考えてるから、つまみ食いされちゃうのかな。
最初のコメントを投稿しよう!