第16話

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第16話

 それから二日後。午前中のレッスンが終わり、午後からはウィチューブ用の撮影をする。ウィチューブは毎週更新してるけど、撮りは二週分を一度にやる。  結構面倒なんだけど、こっちの収入も馬鹿にならないんだよね。このキッチンスタジオのローンを払い終わるまでは頑張らないと。 「この角度でいい? じゃあ、行くわよ。スタート!」  撮影してくれるのは唯一のスタッフ、舞だ。朝から気まずい雰囲気だったけど、仕事となるとしっかりやってくれる。やっぱり頼りになるよ。 「家の庭やプランターにバジルやイタリアンパセリがあると意外に便利ですよ。こんなふうに散らしてあげると、豪華ですよね」 「カット! いいんじゃない?」 「はあー。終わったぁ。ありがとう。じゃあ、これ食べようよ」  撮影が終わると、二人でその日に作ったものを食べる。沢山ある時は、舞に持たせる時もあるんだ。  照明やらを片付け、僕らはその日のメニュー、パスタとブルスケッタ、サラダ等々を少し早い晩御飯として食べる。 「で、沢城さんはノンケだった?」  一口食べてすぐ、舞の容赦ない質問が僕の喉を塞ぐ。 「え……と。すみません。舞様の仰る通りでした」 「はあ……」  舞はわかりやすく大きなため息を吐く。 「あんた、ホントに懲りないね。で? 襲われちゃった?」  僕が答えられず黙っていると、再び大きく息を吐いた。 「で、でも最後までやってない! 美原さんとも最後まではいってないよ! 最後までしたのは鹿島さんだけで……」 「最初も最後もあるか! ド阿保!」  テーブルをドンと叩かれた。ですね。ごもっともです。 「あのね。別にあんたが誰と寝ようと、どんな恋愛しようと構わない。問題なのは、相手が生徒さんだってことだよ? わかってるよね。そこ」  はい。わかり過ぎるくらいわかってます。 「この際だから、鹿島さんとのこと公表しちゃったら? 付き合ってますって」 「あ、それいいかもしれないな」 「冗談よ!」  ううっ、ごめんなさい。 「とにかく、ここまで成功したのは、あんたの料理はもちろん、そのイケメンすぎる容姿もあるんだから。女性ファンを嘆かせないでよ」  結局そこか。でも、お料理って料理そのものも見た目は大事なんだよね。綺麗な色どりや盛り付けで、美味しそうって思う。そこからもう、食事って始まってるんだ。  だから、料理を提供する側も、何も容姿端麗でなくてもいいけど、やっぱり清潔感や雰囲気って大事だと思ってる。  僕はキッチンに立つとき、大抵白シャツにスキニーパンツ(デニムが多いけど)、アクセなんかは付けずにシンプルにしてるんだ。エプロンも無地が多い。ゴテゴテしない方がいいと思ってる。  そんな気遣いも認めてくれてるなら、それはそれで嬉しいんだ。僕を含めてのお料理だからね。  なんて考えてるから、つまみ食いされちゃうのかな。
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