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今日のレッスンも終わり。生徒さんを送り出す。一息つきながら、僕は落ち着かない。どうしてもインターホンに目がいってしまうんだ。また鳴らないかと思ってドキドキそわそわしてる。
鹿島さん、先週は何も言わず、逃げるように帰ってしまったし、あれから1週間、何もなかった(連絡先を交換しているわけでないから、あるわけないんだけど)。
今日、僕は盗み見るみたいにしてたけど、彼はどうだったのかな。鹿島さんは彫が深くて外国人みたいなんだ。長い睫毛も素敵なんだよ。
――ピンポーン
「来た!」
僕はインターホンに飛びつく。はしたないけど、めっちゃ待ってた。
『俺です』
予想通り、モニターには鹿島さんの姿が映っていた。黒い薄手のジャケットを羽織って、カメラを睨んでる。僕は、心臓がはためくのを抑えながら扉を開けた。
「先生、先週はいきなりすみませんでした」
ぶっきらぼうなんだけど、このワイルドさが僕のツボだ。どうしよう。生徒さんとこんな関係になっても大丈夫かな。
僕は鹿島さんを家に上げもせず、玄関のタタキで話をした。生徒さんが出入りするからかなり広めの玄関だけど、それでも距離が近い。
「いえ……あ、でも困るって言ったほうがいいのかな」
「もし、良かったら」
「はい」
「もう一度忘れ物もらってもいいかな」
え……それって、そういうことだよね? 僕は真っ赤になったまま、頷いた。鹿島さんの大きな手が僕の顎にかかり、上を向かせる。あの時感じた柔らかい唇が乗せられて……。
この間は驚きすぎてわかんなかったけど、どら焼きみたいな感触だ。甘くて柔らか……。鹿島さんの唇が僕のそれを食みだした。わあ、蕩けそうだよ。
――ピンポーン!
鹿島さんとの甘いキスに僕がうっとりとしたとき、またインターホンの音が玄関に鳴り響いた。僕らは慌てて体を離した。
「だ、誰……?」
僕は玄関のモニターを覗く。そこには、美原さんが立っていた。
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