私たちは友達です

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突然夜中に裕二が来た翌日、結局昼過ぎに起きてきて、何もなかったように帰っていった。なんなんだろ、あれ。未華子は、前の日の電話の疲れ切った声が気になってはいたが、あえて触れなかった。 (まあいいか。) 一週間後、なんの連絡もなく、今度はやって来た。 「何なの?」 「腹減った。」 「ったく。」 「チャーハンでいー?」 「有り難い!」 と拝むような態度、憎めないといえば憎めないんだけど。 「どうぞ。」 「で、今日は何なの?」 「別に、ただ近くに来たから寄っただけ。」 「うそでしょ。今まで何年もの間、そんなこと全然無かったのに。」 「いいじゃん、そんなの。」 「良くないし。」 「用がないなら、食べ終わったらさっさと帰ってよね。」 「未華子~、そんな冷たくすんなよ。」 「うるさい。」 「女がさ、結婚してとか言い出して。」 「はあ?彼女?大丈夫だって言ってなかった?」 「だから、俺はいつもの通り、結婚する気なんかないよ。って最初から言ってたんだって。あいつだって、私もする気ないわ。って。」 「まあね。女は、そうは言っても、いつか気が変わるんじゃないかって期待してたんじゃない?」 「そんなのルール違反じゃね?」 「そりゃ、私に言っても仕方ない。」 「いや、だから、言ったんだよ。そうね。したらば、泣き喚いちゃって、手付けられなくてさ。ここんとこ、ずーっと、なだめるのが大変でさ。」 「自業自得」 「そんなー。でも、もう1回ゆうけど、ルール違反は、あっちだよね。」 「まあねえ。でも、そういう女だと見極められなかったあんたが悪い。」 「しばらく、かくまってよ。もう疲れたよ。家に待ち伏せされたりして、実家帰ってたけど、居心地悪いし。」 「嫌だよー。その女が、ここに来たらどうすんの?」 「大丈夫、大丈夫、ここは彼女の行動範囲から外れてるから。」 「あのねー。いい加減にして、私は一人の時間を邪魔されるのが大っ嫌いなの。」 「おとなしくしてるから。ね。」「迷惑かけませんし。空気みたいになりますんで。どうかお願いします。未華子さま~。」 「行ってらっしゃいませ~。」 裕二の不気味な見送り。結局、裕二は居座り、合鍵を渡す羽目になったのだった。
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