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2日後、出勤すると、
「やっぱり来なかったです。」
と、錦田くんが教えてくれた。
どうやら、アルバイトさんは、次の日無断で来なかったらしい。
「かわいそうにね。」
と、だけ応えた。名前も知らないままのその女性を、気の毒に思う。
「始めまして。木吉です。」
今日やって来たのは男性だった。アルバイト?人のこと言えないけど、珍しいな。そんなに、若くもない。
「木吉さん、じゃあひと通り、まず説明しますね。良かったら、メモ取りながらで、ゆっくり説明しますから。」
とりあえず、何を任せることになってもいいように、全体的な話を始めた。それぞれの担当者に彼を紹介しながら、まあ、小さい部屋なので、全体で言えばいーようなものだったけど、あえてひとりひとり挨拶しつつ話をして回った。
思わず笑い声を上げると、局ちゃんが、声を出す。
「うるさいよー電話鳴ったらどうすんの?」
「すいません。」
と、慌てて謝る。ついでに、『コールセンターは10時スタートだから。基本それまでに、準備。』なので、この時間に電話がなることは、まあない。局ちゃんは、きっと、私が楽しそうにしてるのが気に入らないんだろう。ただ文句言いたかっただけ。とは、流石に木吉さんには言わなかったが。『メール担当の木吉さんは、朝から対応することになるけど、コールの可能性もあるかも。』と、小さな声で言うと、『無理無理。電話対応なんて出来ない。』と、さらに小さな声で言う。
(はー。もちょっと、まともな人いないのかしら。)
社長が珍しく午後から自分の部屋にいる。社長に呼ばれた未華子は、『正直、なかなか大変な人達ですね。』と伝えた。
「そうなんだよ。僕も困ってる。」
「社長不在が多すぎるのでは?」
「まあ、でも僕がここにいたんでは、何の商談も進んでいないってことだからねえ。」
「そうですよね。」
バイトに、来始めて2ヶ月が過ぎ、なんとなく様子が分かってきていた。
「君、週5の出勤で対応してもらえないか。」
「単なるバイトに何求めてるんです?」
「能力をあえて隠すことはないだろう?」
「何の能力があると?」
「うまく、つきあってる、あの連中とな。」
「まあ。でも、たぶん中原さん以外は仲良くやってますよ。時々飲み会なんかもやってるみたいですから。」
「そうなのか?」
「ええ、会社内では、ほぼしゃべらないですけどね。様子伺ってると、不思議な、団結力はあるみたいです。」
「そうか。」
「中原は、あんなだけど、この会社を始めた頃から頑張ってくれてる。彼女を外せば簡単なんだが、なかなかな。」
(個人的関係があるのか聞きたくなったが、ぐっと堪えた。)
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