二人のアル

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「アルがいつも食べているものでいいよ。今、すんごいはらぺこだから、よっぽど苦手なものじゃなければ何でも美味しいよ」 「んじゃ、よっぽど苦手なものって……?」 「玉ねぎ」 「あー……納得です」  アルは頭を掻いて苦笑いした。まぁ、予想通りって思ったんでしょ。 「アルの知り合いで私みたいなのって、居ないの?」 「んー。まんま獣人族はいますよ。でも、ハーフみたいなのは……」 「珍しいって?」  私はフフンと鼻で笑った。とがった耳の先をピクピクと動かして見せる。母が猫頭の獣人族だった私は、猫耳、尻尾、出し入れ自由な爪を引き継いだ。あとは人間族に比べると多少毛深い、くらい。願わくは、夜目が利く猫目も引き継げばよかったんだけど、それは欲張りというものだ。  アルは腕を組んで思案しながら歩いていたが、パッと顔を上げた。 「じゃあ、ラスタバンの店に行きましょう。ブレッドフルーツのスナックが美味しいんです」 「お! いいね! ブレッドフルーツ大好き!」  ここで私、気が付いた。 「ところで、アル、なんでずっと敬語なの?」 「敬語?」  アルはキョトンとして首をかしげている。 「いつまでも私に悪いと思ってへりくだったままなら、そういう堅苦しいのいいから。もっと砕けた感じで話していいよ」 「砕けた感じ……と言われましても……」 「言われましても?」 「これがいつものボクなので、これ以外と言われても困ります」  アルの困った顔に、今度は私がキョトンとした。あれまー、御育ちのいいお坊ちゃんみたいねぇ。でも、お坊ちゃんは、こんな宅配人なんて仕事しないと思うけど。 「……んー。気を遣われてる訳じゃないのね? それがアルの『素』なんだったら、それでいいわ」  細かいことは気にすまい。それにしても、さっきの振り向きざまのナックルはなかなかのもんだった。 「アルって、なんか武闘スキル持ってるの?」 「あ、さっき殴っちゃったことを言ってるんですよね。すみません。最低限のスキルですよ。売上を守るためです」  なるほどー。宅配人って、納品伝票と報酬持って依頼屋に戻ってこないと行けないもんね。注文主からの帰り道はまんま現金輸送だ。これまで依頼を受ける度に、宅配人を使って納品してきたわけだけれど、実際宅配人と話をするのは、正直言って初めてだったからそこまで思い至らなかった。
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