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「へぇ。そりゃお気の毒様だったな。お前らがビビってなかなかここを整備してくれないから、しぶしぶ俺らが動く羽目になったんだぜ。ま、おかげでギガノスは来なくなったし、そろそろここの輸送路も再開できるぞ。整備した手間賃をジャカランダに請求したいくらいだな」
「……整備? お前らの居住区では無辜の命を奪うことを整備というのか?」
「はっ? 無辜だ? お前、仲間をギガノスに殺されたんだろ? なにボンクラなことを言ってやがるんだ?」
「アレは事故だ。ギガノスだって故意じゃねぇ」
淡々と答えるムルジムに、ハンターたちは目配せ合って鼻で笑った。
「ふん。……てめぇら先住の獣人族とやらは、森の爬虫類にお優しいこったな。成りが成りの分、俺らヒトよりオツムが爬虫類に近いンじゃねぇのか?」
ひどい侮辱に聞いているこっちの腸が煮えくり返りそうだ。誰の所為でこんなことになったと思っているんだ、と怒鳴り込みたい気持ちをぐっとおさえる。後ろ姿しか見えないのでムルジムの表情はうかがい知れないが、ゆるりと身体を傾けて体重を掛ける足を替えると、やれやれといった調子で肩をすくめた。
「後から割り込んできたお前らと違って『共存歴』が長いんだよ。共に上手くやってきたという実績がある。コミュ障の新参者は上手く仲間に入れてもらう方法が分からなくて、無理くり割り込んだ挙句、ぶん殴って黙らせる暴君みたいだけどな。殊勝にメソメソしてりゃあ、手を取って仲間に入れてやったかもしれないぜ」
返す刀でチクリと皮肉る。
「なんだと?」
ハンターが色めき立って得物に手を掛けた。草叢に隠れていた私は、アルと視線を交わす。どうしよう……。大丈夫かな……。
ムルジムは後ろ頭に手をやって、ポリポリと掻いた。まるきり緊張感がない。
「お前らファウンテンのヤツラが好き勝手やったせいで、生息圏を追われたギガノスがここに縄張りをはる羽目になったんだ。そもそもギガノスは、お前らの被害者だ。いわば、てめぇの尻拭いをてめぇでしただけなんだ。こっちに感謝をしろって言うのは筋違いってモンだぜ。ま、俺は喧嘩しに来たんじゃない。そのうちしっぺ返しをくらうぞ、と忠告しに来たんだ。……いや? 焦ってギガノスを倒しまくったってことはだ、もう尻に火がついてんのか?」
「ほう……てめぇ、さてはジャカランダから来てる調査団と通じているな? ダニがどうこうってわけわからんことを言っている連中と……」
「……調査団?」
これにはムルジムも首を傾げた。私も頭に疑問符が浮かぶ。何故ここに居るハンターが私たちのことを知っているんだろう。
「一昨日だったか……。怪しい動きをしている、とファウンテンの警邏部隊にしょっぴかれたぞ」
ハンターたちはニヤつきながら言った。
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