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主にウリ科の収量が減ったんだろうな。ニンジンとかは完全に虫媒花だ。菜っ葉類は風媒花でもあるから、なんとか種は取れたのかも。蜜蟲が居なくなっても、蝶やハナアブは居るから中途半端に採種用の農作物が結実したために原因になかなか気付けなかったとしても仕方がない。まさか蟲のせいだとは思っていなかったんだろうなぁ。私はつらつらと考えていた。
そんなこんなで、作付けの種苗の類をジャカランダに頼るようになった。
「小規模旅団になってから、種子の値がつり上がったんですね」
アルが溜息をついた。ベネトが頷く。
「ええ。輸送にリスクが付くようになったから、全体的に輸送費が上乗せになったの。こちらからジャカランダに卸す商品は変わらないまま、ジャカランダから買い入れる金額だけどんどんつり上がる」
もともと排他的なファウンテンの住人が、ますます外の者に対してヘイトを溜め込んでいったのは、そういう事情も手伝っていたのかもしれない。
「だからと言って『十年以上も前からいずれこうなることは解っていた』って言われても今更何ができるというの?」
それはまぁ……確かに。
「で、ジャカランダからの調査団のメンツを連れて行ったのは……?」
「私たちファウンテンの情報屋は、議会の意向でしか動けない。シュルマの警告を無視して自分たちを正当化することしか頭になかった彼らを説得するには、証拠が必要だった。『怪しい動きをしている者を捕らえる』のは議会を納得させる口実よ。今、ジャカランダの調査団の方々にはファウンテンの議会に収集した情報を公開してもらっている。よその居住区の、利害関係のない者が調査した結果なのだからきっと説得力があるはず」
「議会を説得したら、この状況の、何がどう変わるんですか?」
アルは怪訝そうな顔をして問うた。ベネトは、そうね、と力なく笑った。
「年中行事のように恒例化している、ネズミの駆除作業は止めになるわね。あと、輸送路のギガノス狩りも。ファウンテン周囲に無節操に広がっている火焔木も手入れが必要だわ。爬虫類が戻ってこられる環境が整うかどうか……分からないけど」
「まだやってたんですか? ネズミ駆除」
私は呆れ顔で返す。ダニが増える原因だって解ってたくせに……。
「だから、……議会がストップしないからよ。ファウンテンは、そういうところなのよ」
ベネトは首を左右に振りながら答えた。
自分たちの居住区なのになんでそうなるの? アルと私は溜息をついた。
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