二人のアル

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 管理のジジイが街の警邏(けいら)を連れてきて、今だに伸びている賊を引き渡した。アイツ、何を理由に私の包みを盗ろうとしたのだろう。これは、安全に仕事をするために家から持ってきたもの。これが無いと、私は仕事ができない。そういう意味で、とっても大事なものだ。私の居たコミュニティ以外の場所では手に入らないから。当分、あそこには帰れないから、……。  私がナケナシの荷物をホコリを被ってバラバラに散った羽目板の間から回収している間、サルガスとシャウラはアルと何事か話をしていた。ジジイは穴の開いた天井を見分(けんぶん)している。ふと気になってジジイに話しかける。 「ねぇ。天井の原状復帰費用とか、請求されちゃうわけ?」 「いやー、厳密にいうと、穴をあけたのは酔っぱらいアンちゃんだからな。それに……」  と、ジジイは私を見た。 「賊から罰金徴収したら、そこから修理費用をいただくさね」 「えー? 泥棒するくらいなんだから、罰金なんて徴収できると思えないけど?」  私が口を尖らせると、ジジイはやれやれと肩をすくめた。 「つくづくと嬢ちゃんは世間知らずだな」  図星をつかれてムッとする。まだまだ若僧だし、そりゃそうかもしれないけどさ。 「賊の持ちもん見て解ったろう。ありゃ、雇われの探索者崩れだ。泥棒じゃぁない」 「探索者?」  私と同業なのか? マジで?  「お前さん、ラバーナムの出身じゃろう?」 「うひ? 何でばれたの?」  私は目を瞬いた。しらばっくれたところで何の得にもならない。此処は素直に認めておく。ジジイは私が抱えている包みを指さして言った。 「ソイツの匂いで解る。知ってる奴は知ってるってことだ」 「凄い! 亀の甲より年の功ってヤツね」  笑って茶化したのに、ジジイは乗ってこず、説教をたれるような雰囲気で返された。 「お前さんが思っている以上に、便利な代物だからな。正規のルートでは出回らないものであるし、欲しがる奴もいるのじゃろう」 「使い方に癖はあるけどね。さっき、オッサンにも酔っぱらいアンちゃんにも、ここにいるのは得策じゃないって言われたの。アルに、新居の世話をしてもらう手筈になってるから、早々にここを離れるわ」 「ああ、それがいい。ここら界隈は有象無象なんでも受け入れる懐の深さがよいところだが、あけっぴろげすぎて自分を守るスキルが低い者には、ちいと厳しい」  悔しいけどその通りだわ。今回も、独りだったらどうなっていたか解らない。賊に気付いたオッサンたちが騒いでくれたから、逃げる前に捕獲して取り返すことも出来たけれど、これを盗られてしまっていたら、夢をあきらめて、すごすごと元のコミュニティに戻らなくてはならなかった。 「嬢ちゃんは……探索者の上位クラス『ハンター』になるために、ここに来たんじゃろう? 初手でつまずいては元も子もないからな」  私は深く頷いた。
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