いっしょうのおねがい

３

　いそいそと着ていくスーツは誰が買ったものか、ネクタイは誰の財布からお金が出たか、靴は誰のポイントで買ったか、都合が悪いことはみんな記憶から消して、おしゃれですねって言われて浮かれて、にやにやしていることなんか、とっくに「オミトオシ」なんだから。

　そのたびに、あなたはいつも伝家の宝刀で「一生のお願い」をする。

　かんべんして、一生のお願い、別れるなんて言わないで。

　先を越されて言われると、ぐっと息がつまってしまう。

　ずるい奴、むかつく、頭にくる。

　そりゃ、淡い期待していないと言えば私だって、嘘になるよ？

　ぎりぎりかもしれないけれど、子供だってほしいし、面倒くさくてもかわいいって噂だもの。

　見栄っ張りで、常に金欠で、財布の境界線がない、だらしない男よりよっぽど、世話のしがいがあるもん。

　裏切らないし、嘘もつかないし、他の女へふーたらふーたら、渡り歩いたりしないし。

　全力で私に頼って、大きくなってくれるんだから。

　俺はどうなるんだよって、きっと言うだろうね。ああむかつくなあ。