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今日こそは、ちゃんと、はっきりと……。
「おかえりぃ、遅かったね。今日はユウ君の好きな生姜焼きだよ」
失敗だ、また失敗だ、最悪、残念、私っていちばんの「嘘つき」じゃん。
言おう言おうと思っていたことが、ユウ君の顔を見ると「まあ、明日でいいか」なんて、先送りにしちゃうし。
自分に嘘をついて、一生のお願いを聞き入れてしまいがちだし。
「ありがとう、桃菜のそういうところ大好き」
香水のにおいをさせたまま、ユウ君は私を抱きしめる。あったかい。やわらかい。
「しょうがないな……」
「なにそれ、シャレ?」
違うよ、と私はユウ君を見上げて微笑む。
ぎゅっと、足の指を内側に曲げて。
胸がちくりと痛んで、鼻の奥が酸っぱくなっても。
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