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彼から共同研究の話をもちかけられたのは、大学卒業を間近に控えた時期のことであった。 卒業論文や就職等、世話になったことについてお礼を述べて、研究室に背を向けたその時、彼は俺の肩に手をのせた。 「君の研究は興味深い…ただの論文として完結させるのはもったいないよ…僕の予想では君の考え方を応用すれば、あるいは、タイムマシンをつくることが出来るかもしれないとも思うんだ…」 鋭い… 俺の目の前でへらへらと笑っているこの人間は、ただのつまらない男ではない… 俺は思わず、舌打ちをしてしまった。 誰にも悟られたくはなかった。 自分でも気づきたくはなかった。 子どものころに心の奥底に沈めた筈の思考が湧き立ってきた。 自分の論文がタイムマシンに応用できるとは思わない… そんなふうに、思い続けることができたらよかったのだ… でも、俺にはそれが出来なかった。 案外、不器用で素直なのだ。 「一緒に、タイムマシンをつくらないか?」 俺は彼の方を振り向くと、黙ってうなずいた。
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