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 スペリアの衛兵に慈悲の心はない。鬼の表情で『廿(ヴァン)』の形をした燃える烙印を、成人したリコたちの首もとに焼きつけ始めた。血と皮の焼け焦げた匂いが、あたりに異臭となって漂った。  血が止まる暇も与えず、スペリアはリコたちを街の外門に連れて行った。そして無手のまま、荒野へと放り出した。  この恐ろしい行事は、成人を迎えるインフェリアには避けられない運命だった。  その理由はスペリアの王が独断で決めた法にある。下位者は20歳を境に、容姿が衰えていく種族だと定めていた。上位者は美しくない者を徹底的に嫌う習慣があった。  ちなみにスペリアには千年を越える寿命があり、その間も美しさが衰えることはない。しかしインフェリアは20歳から肉体の衰えがはじまり、約50年で自然の寿命を終える。  スペリアが定めた律によって、今年もインフェリアが街から追放された。対象者は8名。そのうち女性が2名、残りは男性だった。  街の外に広がる荒野は、昼と夜の寒暖差が激しい過酷な環境だった。  下位者たちはただひたすら前に進んだ。食料や水は自分たちで探すしかない。数日もすると、体力の無い弱い者が次々と倒れていった。
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