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「ほな平均ほんのちょっと超えれたくらいで満足してちゃぁ、あかんの分かっとる?」
「分かってるって」
うるさいなぁ。と心の中で思いながら、昇子は薄ら笑いを浮かべて不愉快そうに答える。
「昇子はやれば出来るめっちゃ賢い子なんやから、ここで本腰入れて頑張らなきゃね。ところで昇子、あの約束は覚えとる?」
母は険しい表情から、にこにこ顔へと急変化した。
「えっ……何の、ことかな?」
昇子は視線を天井に向けて、忘れた振りをしてみる。
「とぼけたって無駄よ。証拠はちゃぁんと残しとんやから」
母はそう告げたあと、自分のスマホを昇子の眼前にかざすと同時に音声データの再生アイコンをタップする。
『昇子、今度の中間テストでも総合得点四〇〇なかったら、塾へ放り込むからね』
『分かったよ、ママ。それくらい楽勝だって』
こんな音声が流れたあと、
「このことよー」
母はニカッと微笑みかけてくる。
「……録音、してたの。いつの間に?」
昇子の顔は引き攣った。彼女はあのやり取りをしっかりと覚えていたのだ。
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