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「あら、グウィ兄さま、お帰りなさい」
昔なら、グウィディウスの姿を見るや、走ってその胸に飛び込んでいたペルラも、今やそっけないものだ。
いや、まだ笑顔があるだけましなのかもしれない。
「ガレ姉様ならおでかけよ」
「また街か。僕も帰りに寄ればよかった」
ペルラは渋い顔になって、
「それは得策ではないわね。今日は青年会の集まりに顔を出すと言っていたから。お兄様が行ったら、きっと不愉快になるだけよ。姉様を囲んでいるのは若い男性ばかりだもの」
「……話だけで十分不愉快だよ」
「こころの狭い人間は嫌われるわよ」
「ご親切にありがとう。ところでペルラは何をしていたの?」
仕方なしに迎えに出てきたのがありありとわかる様子のペルラにたずねた。
この屋敷に、主人を恭しく出迎えてくれるような家人やメイドやいない。
使用人はいるが奉公人はいない。労働としての家事を手伝う者が何人かいるくらいだ。
「屋敷のみんなでパンを焼いていたの。明日は花売りの日だから。花売り娘に配るパンを、そうね、百個は焼いたわ!」
「ああ、明日か」
ガレベーラが五のつく日に孤児や浮浪児と共に街で花を売るのはもはや町の恒例となっている。
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