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ガレベーラが母親を亡くなしたのは五つの時で、もとより病弱だった母がだんだんと寝台で過ごす時間の方が多くなり、その命の灯が消えた日のことをガレベーラは幼いながらによく覚えている。
雨の降る暗い日で、葬儀の日まで雨は降り続いたままだった。
そして、その日もまた、雨だった。
「お、お、お嬢様っ!」
ガレベーラは部屋でグウィディウスへの手紙をしたためていた。
浮かない気持ちだったのは、天気のせいかもしれないし、なにか予感めいたものがあったのかもしれない。
「ミラ? どうしたの」
転げんばかりに足をもつれさせて部屋に入ってきた侍女は青い顔をしていた。
「だ、旦那様が……」
「お父様?」
「旦那様がお倒れになったと……」
そのときから、ガレベーラの人生の転落は始まった。
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