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1.没落
父親の死は病からのものだった。
あまりに突然で、最期の別れさえ告げられなかった悲しみは、じわじわと時間をかけてガレベーラを侵食していった。
そんな鈍化した精神が、変化への気づきを遅らせた。
喪に服している間に季節は一つ過ぎていたし、明るい話をすることもできそうになかったので、社交の場はながらく遠慮していた。
屋敷に弔問に訪れる客はあるようだったが、ガレベーラ個人へのおとないは誰からもないこと、手紙や見舞いの品も誰一人として届かないことはたいして気にならなかった。
グウィディウスからの手紙だけは毎日心待ちにしていた。
しかし、それもまた届かなかった。
ガレベーラを慰めてくれる内容のものはおろか、カトル侯の死を悼むものすらまだだった。
異国にいるグウィディウスの身に何かあったのかもしれないと案ずるのがまず先であっただろうし、なにより、ガレベーラを何より大切に想ってくれている彼からの便りが一切ないことを不審に思えたはずなのに。
誰より早く駆けつけて、そばにいて欲しかったグウィディウスの不在に、呑気に不満など募らせていたのだ。
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