1.没落

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 孤児院の院長は、扉を叩いたガレベーラを見て驚きの声を上げた。 「どうなさったのですか……!」 「急なことで申し訳ないのだけれどお願いがあるのです。一晩、泊めていただけないでしょうか」  ただならぬ様子は一目見てわかるものだったのか、 「まあまあ……、そんなお姿では寒かったでしょう」  そう言って、中へ誘ってくれる。  ほんのり暖かい建物の中の空気に触れて、ガレベーラは声を上げて泣きたくなった。  しかし、泣いてはいけない。ここには子どもたちがいる。ガレベーラが泣くわけにはいかない。 「みんなの食事はもう済んだ? デザートにクッキーがあるのよ」 「いえ、ちょうどこれからでして。ようございました。もう少し遅ければガレベーラ様の分がなくなってしまうところでしたわ」 「ありがとう。みんなと一緒に頂いてもかまわない?」  院長は困ったように微笑んだ。  その、困惑の意味を知ったのは食卓を見て知る。  子どもたちは、ガレベーラの意外な訪問に興奮した様子だったが、その食事の内容を目の当たりにし、ガレベーラは言葉を失った。  いくら子どもの食事とはいえ、パンは半分、チーズが一欠片と、お飾り程度の具しかないスープ。  ガレベーラも同じものが並べられた。  ひどく空腹だったが、空腹など感じている場合ではなかった。 「ご寝所にはこちらの部屋をお使い下さいませ」  個室に案内されるも、急ごしらえとわかる。 「みんなと同じでもいいのだけれど、それだと迷惑がかかるのかしら……」  ガレベーラが尋ねると、 「申し訳ございませんが、子どもたちに一人一つのベッドはないのです。みな、床で寝ておりますので、さすがにガレベーラ様をそちらにお通しするのは……」 「食事も……ごめんなさい。私が頂いたせいで院長は食べてないのではなくて? 教会にお願いした方がよかったわね……」 「いえ、大した差はございませんでしょうが、こちらは子どもだけですので、ガレベーラ様の御身を考えればこちらのほうが少しはましといえるかと」  
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