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孤児院の院長は、扉を叩いたガレベーラを見て驚きの声を上げた。
「どうなさったのですか……!」
「急なことで申し訳ないのだけれどお願いがあるのです。一晩、泊めていただけないでしょうか」
ただならぬ様子は一目見てわかるものだったのか、
「まあまあ……、そんなお姿では寒かったでしょう」
そう言って、中へ誘ってくれる。
ほんのり暖かい建物の中の空気に触れて、ガレベーラは声を上げて泣きたくなった。
しかし、泣いてはいけない。ここには子どもたちがいる。ガレベーラが泣くわけにはいかない。
「みんなの食事はもう済んだ? デザートにクッキーがあるのよ」
「いえ、ちょうどこれからでして。ようございました。もう少し遅ければガレベーラ様の分がなくなってしまうところでしたわ」
「ありがとう。みんなと一緒に頂いてもかまわない?」
院長は困ったように微笑んだ。
その、困惑の意味を知ったのは食卓を見て知る。
子どもたちは、ガレベーラの意外な訪問に興奮した様子だったが、その食事の内容を目の当たりにし、ガレベーラは言葉を失った。
いくら子どもの食事とはいえ、パンは半分、チーズが一欠片と、お飾り程度の具しかないスープ。
ガレベーラも同じものが並べられた。
ひどく空腹だったが、空腹など感じている場合ではなかった。
「ご寝所にはこちらの部屋をお使い下さいませ」
個室に案内されるも、急ごしらえとわかる。
「みんなと同じでもいいのだけれど、それだと迷惑がかかるのかしら……」
ガレベーラが尋ねると、
「申し訳ございませんが、子どもたちに一人一つのベッドはないのです。みな、床で寝ておりますので、さすがにガレベーラ様をそちらにお通しするのは……」
「食事も……ごめんなさい。私が頂いたせいで院長は食べてないのではなくて? 教会にお願いした方がよかったわね……」
「いえ、大した差はございませんでしょうが、こちらは子どもだけですので、ガレベーラ様の御身を考えればこちらのほうが少しはましといえるかと」
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