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飾りのような靴でも、ないよりはましだったが、足の裏にできた水ぶくれはつぶれ、ひりひりと痛む。
一歩踏み出すことさえ辛くて、とうとう動けなくなったガレベーラは、長い間、道端にうずくまっていた。
「お嬢様はあいにくご体調がすぐれず、お会いになれないとのことでございます」
再び門を叩いてみたローズの屋敷ではそう言って断られた。
「あ、あの……、お恥ずかしい話なのですが、食べ物を少し頂けませんか。お菓子ではなく、パン一切れでいいのです」
恥を忍んで言うと一袋のパンをもらうことできた。
彼女や彼女たちの家が、なぜガレべーラを助けてはくれないのか、せめて会おうとしてくれないのか、理解に苦しんだ。
貴族にとって慈善は美徳であり、持てる者の義務ではないのか。
ガレべーラと結い上げていない髪は、昨日から梳くこともかなわず、糸のような細い髪は所々絡まっている。
寒く、身体が痛む。汚く、疲れ果てて、泣こうにも涙を絞り出す気力もなかった。
なにより、空腹が限界に近い。
正直なところ、食欲があるかといえばそうではなかったが、体が食べることを欲しているようだった。
ローズの屋敷でもらったパンも最後の一つだ。
これを食べてしまったら、どうすればいいのだろう。またローズのところにもらいに行くのか。
それでも食べなければもう立ち上がることすらできそうになかった。
のろのろと義務的にパンを口に運ぼうとしたとき、ふと視線を注がれていることに気づいた。
小さな女の子の手を引いた少年が、少し離れたところからガレベーラを見つめている。
兄と妹だろうか。よく似た顔をしている。
痩せて頬がこけている。向き出た足に靴も履かず、ぼろ雑巾のような服を着ている。
こんな子どもたちを昨日から何人も見かけた。
可哀そうだと思っていた孤児院の子どもたちでさえ、十分に恵まれているのだ。
二人はじっと、ガレベーラが手にしているパンを見ているようだった。
ガレベーラは、反射的に、咄嗟にパンを一口に押し込んでしまおうかと思い、次の瞬間、そんな自分に絶望した。
「なんと、卑しいことを……」
ようやく涙が出た。
頬を静かに伝って流れる。
ガレベーラは立ち上がって、二人のもとまでよろよろと近づいた。
「どうぞ、差し上げるわ。一つしかないのだけれど」
少年はまっくろに汚れた手で、パンを受け取った。
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