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2.路上生活
兄はラナンといい、妹はペルラと言った。
住んでいるところだと連れられたのは、路地裏にある古い建物の階段の下だった。
大人の腰の高さに、古ぼけた板を利用して、屋根が作ってある。
もう一枚板を立てて、奥は壁ともいえない囲いがしてあった。
「ガレ、ここに」
ラナンが囲いの中のぼろ布を敷きなおしてガレベーラを呼ぶ。
ラナンは綺麗な顔をした少年だった。年は十一で、ペルラは九つだと教えてくれた。
二人の母親は数年前に病気で死に、父親は顔も知らないらしい。
もとから貧しかったが、母親が死んで家も失い、路上で暮らすしかなかったそうだ。
辺りには、至るところに同じような子どもたちが毛布にくるまって寝ていた。
ラナンの家は他と違って屋根があるだけ立派と言えるのかもしれない。
「ガレのかみのけ、きれい……」
囲いの下に二人で入ると、ペルラは伸びきった前髪のすきまから覗く瞳を輝かせた。
遠慮がちに言う。
「あの、さ、さわってもいい?」
「もちろんよ」
「わあ、きれいだからどきどきする」
「もしよかったら、編んでくれない?」
「えっ、いいの? あたし、だれかのかみのけ、さわったりしてみたかったんだ!」
「ずっとまとめたかったの。結わう紐のようなものあるかしら?」
ラナンが奥から古びた缶を引っ張り出してきた。
その中をあさって、代用できるものを探してくれる。
ペルラは四苦八苦しながら、ガレベーラの長い髪を三つ編みにしてくれた。
二人の住まいは子どもふたりが横になるのがようやくといえる広さだったので、ラナンは外に座って寝ると言った。
「……ありがとう」
地面は固くて冷たかった。身体がいたい。寒い。
一日前ならとうてい信じられない環境で、さらにはそこに横にさえなっていたが、ガレベーラには、ただただありがたかった。
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