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『できたわ、完成よ!』
ガレベーラは城内に咲いていた白い花を、手早く器用に編んで花の輪を作った。
『とても上手だ』
『ええ、わたくし得意なの。さあ、グウィディウス、頭を貸して』
『え、僕? いやだよ、男なのに花冠なんて似合わないよ』
『いいえ、あなたほど可憐な花がよく似合う王子はいないわ。まるで天使のようよ?』
『ガレベーラがかぶればいい。僕には腕輪を作ってよ』
『まかせて、お安い御用よ』
*
花束を作りながら、花遊びをしていた頃を思い出した。
街には花売りの子どもたちがたくさんいた。
ガレベーラが公女だったころから、たくさんいたのだろうが全く知らなかった。見ていなかったのか、見えていなかったのか。
もし当時に知っていたなら、全員の花籠ごと買い上げるのにと歯がゆく思うが、孤児院以外で、街の子どもたちに触れあう機会などなかった。
執事や侍女によって意識的に避けられていたのかもしれない。
「きょうもいつもより売れたね! ガレ、じょうずだもん」
額をすっきりさせたペルラが笑顔で言う。
ガレベーラがぼさぼさだったペルラの髪を編んでやったのだ。
瞳がはっきり見えて可愛らしい。
ペルラはそう言ったが、小花を二、三輪束ねただけの小さな花束は、ペルラ達が作るよりもガレベーラの方がいくぶん見栄えよく作れたという程度だ。
一日歩いて、売れたのは三つだけ。
三つ売って、ようやくパンが一つ買える。
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