269人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
*
花売りの途中で、葬列を見かけた。
ペルラが、葬列に続くと施しをもらえるというので、後を追ってきた。
町はずれの墓地には近くに貧民窟があり、病人や老人など、より一層劣悪な環境下で人々が暮らしている。
ガレベーラももういちいち驚きはしない。それくらいには、町の貧しさを目の当たりにする毎日だ。
「ねえ、あれ、……ラナンじゃない?」
ガレベーラは足を止める。
「ほんとだ! 兄さまだ」
柵の向こうで、大人に混じって穴を掘っているように見受けられる小さな体を、ペルラと二人、しばらく見ていた。
「兄さま、あれ、しごと?」
ガレベーラが答えに困っていると、後ろから声が聞こえてきた。
「ありゃあ、墓掘りだよ。墓泥棒ともいうね」
振り返ると、物乞いの老婆だった。
髪は伸び放題で、瞼も垂れ下がってどこに目があるかわからない。見えているのかも定かではない。
「おやおや、子どもがいるね。本当は墓掘りに子どもは禁忌なんだけどねぇ。幼子の無垢な魂は死者の呪いをその身に受けやすいからねぇ」
「墓泥棒……」
繋いでいたペルラの手をぎゅっと握る。
「あんた、姫さんかい?」
老婆が眉をつりあげたので、その奥に隠れていた瞳が見えた。
目が合う。
「きれいだねぇ。いいねえ、あんたは。金になるものがまだまだその身にあるさねぇ」
ガレベーラは、ペルラの手を引き、足早にそこを後にした。
無言で歩く。
確かに、近頃ラナンの帰りは遅かった。
前までは日が暮れる前には戻ってきていたのに。
ガレベーラの食い扶持を稼ぐためか、それともガレベーラの薬代のためか。
心優しき少年は、問いただしたところできっと答えてはくれないだろう。
「ペルラ、少しここで待っていて」
ガレベーラは先ほどの老婆のところへ引き返した。
最初のコメントを投稿しよう!