2.路上生活

6/15

269人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
*  花売りの途中で、葬列を見かけた。  ペルラが、葬列に続くと施しをもらえるというので、後を追ってきた。  町はずれの墓地には近くに貧民窟があり、病人や老人など、より一層劣悪な環境下で人々が暮らしている。  ガレベーラももういちいち驚きはしない。それくらいには、町の貧しさを目の当たりにする毎日だ。 「ねえ、あれ、……ラナンじゃない?」  ガレベーラは足を止める。 「ほんとだ! 兄さまだ」  柵の向こうで、大人に混じって穴を掘っているように見受けられる小さな体を、ペルラと二人、しばらく見ていた。 「兄さま、あれ、しごと?」  ガレベーラが答えに困っていると、後ろから声が聞こえてきた。 「ありゃあ、墓掘りだよ。墓泥棒ともいうね」  振り返ると、物乞いの老婆だった。  髪は伸び放題で、瞼も垂れ下がってどこに目があるかわからない。見えているのかも定かではない。 「おやおや、子どもがいるね。本当は墓掘りに子どもは禁忌なんだけどねぇ。幼子の無垢な魂は死者の呪いをその身に受けやすいからねぇ」 「墓泥棒……」  繋いでいたペルラの手をぎゅっと握る。 「あんた、姫さんかい?」  老婆が眉をつりあげたので、その奥に隠れていた瞳が見えた。  目が合う。 「きれいだねぇ。いいねえ、あんたは。金になるものがまだまだその身にあるさねぇ」  ガレベーラは、ペルラの手を引き、足早にそこを後にした。  無言で歩く。  確かに、近頃ラナンの帰りは遅かった。  前までは日が暮れる前には戻ってきていたのに。  ガレベーラの食い扶持を稼ぐためか、それともガレベーラの薬代のためか。  心優しき少年は、問いただしたところできっと答えてはくれないだろう。 「ペルラ、少しここで待っていて」  ガレベーラは先ほどの老婆のところへ引き返した。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

269人が本棚に入れています
本棚に追加