269人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
*
施しを受けられる家はいくつかある。
追い返されることがほとんどだったが、中には一晩の宿を与えてくれようとする親切な中流階級も存在したし、下流階級の貧しい家庭であっても、なけなしの食料を分けてくれるような奇特なこともあった。
「このお屋敷……?」
ラナンに連れられて、そのうちの一軒を訪ねた時、ガレベーラは驚いた。
そこはトーロ夫人の屋敷だった。
立派な門の向こうに立つ屋敷を見上げ、半信半疑でラナンを窺うと、
「パンとたまにお菓子までくれるんだ。冬は毛布なんかもくれる。こんなお貴族様もいるんだよ」
得意げにそう言って、勝手知ったるとばかりに裏口を叩く。
ドアが開いて温かいランプの光がこぼれ出てくる。
メイドとラナンが何か話している。
しばらく待たされた後、ラナンは包みを抱えて戻ってきた。
「奥様が服をくれた!」
「まあ、どうして!?」
「服が清潔になれば、なおいいってさ!」
ガラベーラは、二人に身なりを整えることを教えていた。
月に一度、家を持たない周辺民に対して、公衆浴場が解放される。しかし、人数に限りがあり、特に子どもは入れないことの方が多い。
ガレベーラはその機会を待つだけではなく、最低でも二日に一度は身体を拭くようにさせ、天気のいい日には、泉で洗髪することもすすめた。
気候の良いうちはいいが、冬が近づくと厳しくなるが、それはその時だ。
トーロ夫人からもらったのは子どもの古着だった。
使用人の子のおさがりだろうか。華美ではない粗末な服だが、清潔さは十分にある。
最初のコメントを投稿しよう!