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新しい服に、ペルラは特に大喜びだった。
ガレベーラは、自分が子どもの頃に着ていたものをあげたいと思った。どんな顔をしただろう。
手の届かない憧れは人を卑屈にすることもあるが、ペルラは前向きで素直であった。性格も明るい。
それとも、動きにくいだけの実用的ではないドレスなど彼女には必要ないだろうか。
二人が着替えると、その姿は出会ったころとは見違えるようで、もはや家のある下流階級の子どもにさえ見える。
「煙突掃除も家に入れてもらえるようになったし、これでもっといい家に出入りできるかもしれない。ガレのおかげだ!」
めずらしく、ラナンも無邪気な子どもの顔になっている。
ガレベーラは、心の中でトーロ夫人に礼を述べた。
彼女は、おそらくあの時もすでに、なすべきことをわかっていて、人知れずそれを実行していたのだろう。
心が震えた。見かけや、噂で人を判断してはいたこと。
口先ばかりで、結局、ガレベーラは何も本質がわかっていなかったこと。
──いつか、もしも、また何かできるようになったら、その時には。
ここまで落ちたからには、二度と来ないだろう未来だろう。
それでも、ガレベーラは誓わずにはいられないのだった。
*
路上で暮らすようになって、数ヶ月が経っていた。
ガレベーラは驚くほど、たくましく、環境に馴染むことができていた。
再び熱を出したり、空腹に倒れることもなかった。
毎日は、日銭稼ぎのその日暮らしで、金が貯まるということはない。
その日、パンを食べると言う目標のために、朝が始まる。
希望めいたものはなかったが、いつか三人で屋根と壁のある部屋に暮らせたらというのがガレベーラの願いだった。
暇を持て余す夜には、二人に文字を教えた。
街で新聞が拾えたら、それを読む練習をした。
「身なりは大事。上等かそうでないかではなくて、気を遣っているかどうかよ。相手の方はまずそこを御覧になるの」
その他に、ガレベーラが二人に与えられるものは言葉遣いや発音、礼儀やマナーだった。
正義感が強く、どこか品のあるラナンが教養を持てば、煙突掃除や路上掃除以外の仕事に就くことができるかもしれないと思ったのだ。
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