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「あの人たちが探してるのは、ガレだろ?」
ラナンの質問は突然のことで、ガレベーラは頷くことも否定することもできなかった。
「……なんとなくわかってた。ガレは貴族だったんじゃないかって」
「ガレ、おひめさまなの? わるいことしたの? ろうやにはいるの?」
縋るようにスカートを掴んでくるペルラを、ラナンが優しく引きはがす。
「ペルラ、ガレが悪いことすると思う?」
「おもわない! ガレはすごくやさしいもん」
「さすがに浮浪児までいちいち調べに来ないだろうから大丈夫だと思うけど……」
令嬢だったガレベーラがこんなところで生きて暮らしているなど、貴族の誰が想像できるだろうか。
それでも、捕まれば連れ戻されて、また北へ嫁がされるのだろうか。
ラナンとペルラを連れて北の辺境に嫁げやしないだろうか。それなら喜んで行くのに。
継母に願い出てみようかと馬鹿な期待を持ったのは一瞬だった。
そんな幸せな話がどこにあるというのか。
侍女さえ伴わせてもらえなかったものを、浮浪児を二人も引き連れて、許されるはずもなければ、受け入れてもらえるはずもない。
ましてや、一度逃げだしたのだ。
領主が用意するといった支度金の値段も下がっているだろう。
それとも、もはや傷物になったと娼館にでも売られるかもしれない。
あの時でさえ、継母の剣幕は恐ろしいものだった。
手間をかけさせた分、今度は折檻を覚悟しておいた方がいいかもしれないくらいだ。
震えを治めるように、自身を抱きしめるガレベーラに、「平気だよ、きっと見つからない」とラナンが頷いて見せる。
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