3.騎士団

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 団長の声を無視して部屋を出ると、再びデヴンが待ち構えていた。 「西に仕事を作ってくれるからそれに随行しろって」 「おお、それは俺が西の取るに足らんような問題を大げさに報告しておいたおかげだな」  デヴンの軽口はいつものことだが、その倍以上、彼はグウィディウスのために心を砕いてくれている。  視察前、グウィディウスとデヴンは西か東、どちらの指揮を執るか自由に選ぶことができた。  任務内容に大きな差はなかったが、西の行程はかなり厳しいものだった。そのうえで、デヴンはあえて西を取ったのだ。  日程に余裕のある東にグウィディウスが行けば、地方の町を捜索する時間にあてることできる、と。 「西はまだ探せてなかったな」 「そこまで広域に包囲網を敷くことはできない。いくらお前が王子様でもな」  デヴンが肩をすくめて、おどけで見せる。 「人買い馬車の行先が違っていたか、なんらかの事情で南から西へ逃げ延びたのか。いや、そんなことはどうでもいい。デヴン、もう一度詳しく聞かせてくれ。彼女を見たのか?」 「ああ、見た。話もした」 「話を!? なんて!?」  グウィディウスは、デヴンの両肩を掴む。 「おいおい落ち着け」と言われて、ちょうどそこにあった椅子に腰を下ろした。  落ち着こうと、何度か自分に言い聞かせるように頷く。 「道中、リジという村で一泊したんだが」  西のはずれの、貧しいが活気のある村で、のどかな景色が広がっていたと言った。 「夜、酒盛りの途中で、空気を吸いに外へ出たんだ。そうしたら、店の漏れ灯りで本を読んでいる少年がいた」 「少年?」 「ああ。身なりからして労働少年のようだった」  デヴンは、らしくない神妙な面持ちで言った。 「特に西は識字率が低い。それなのに、本を読んでいたんだ。しかも絵本なんぞじゃない分厚いやつで、だから、おやと思って、話しかけた」 『字が読めるのか?』  少年は、その時はじめてデヴンの存在に気づいたようで、はっと驚き、やがて、無言で頷いた。  そして、慌てて本を閉じたかと思うと、頭を下げて、逃げるようにして裏口から店に入っていったのだという。  
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