269人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
リビに着いたときはもう夜になっていた。
デヴンから教わった宿は探すまでもなかった。
リビに一つしかないからだ。
宿屋の戸を叩く。
「はいはい。ようこそ、いらっしゃいませ。道中、大変でしたでしょう」
人のよさそうな丸顔の主人が顔を出す。
グウィディウスとペスロは、念のため、騎士団の制服ではない町人の格好に着替えている。
ガラベーラに警戒されないためだ。
王城の騎士団だとわかれば、ガレベーラが逃げ出す可能性もなきにしもあらずとデヴンに言われたからだった。
「お兄さん方、お食事は?」
主人に尋ねられ、
「まだなんだが、何か頼めるかな」
「もちろんです。どうぞどうぞ。お客さん、王都から? 見たところ、お客さんらには、一番いい部屋が良さそうだ」
「では頼む。ベッドが二つあれば、一部屋でも構わない」
「よろしいのですか」
ペスロが遠慮がちに言う。
騎士団でグウィディウスは王族の扱いはされていない。昇進も生活も特別ではなく、他の団員と同じくしている。
ほかに、留学時代からもそうだが、身の回りのことは一人でできるし、風呂も寝室も他人と共同でも構うことはなかった。
食堂に案内されると、商人らしき男が三人いるだけで、宿泊客はほかにいなかった。
さすがに、今ここにガレベーラがいるなどとは思っていない。
皿洗いとしての仕事があるのは厨房で『少年』であるらしい彼女は食堂の給仕など表へ出ることはないはずだからだ。
最初のコメントを投稿しよう!