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次の日、夜も明けきらぬうちにグウィディウスは目覚めた。
目覚めたと言っても、ため息と寝返りばかり打つのをやめにして、潔くベッドから起き上がったと言う方が正しい。
「おはようございます」
グウィディウスが起き出せば、ペスロも床を出る。
「悪い、起こしたな」
「いえ」
素早く身支度を済ませたペスロはもう腰に剣を差していた。
「私が家を探して参ります。今の時間なら馬で行っても目立たないでしょうから」
ギーという少年は、村の外れにある屋敷の使用人だと昨夜のうちに宿屋の主人に聞いていた。
「いや、僕も一緒に探すよ」
待ってなどいられなかった。
*
外は肌寒かった。
東の空がぼんやりと白みを帯びてきていて、まだ往来には誰もいない。
愛馬にまたがり、ペスロも隣にいるのに、夜明け前の見知らぬ村はグウィディウスにひどく孤独を感じさせた。
期待と不安では、不安の方が勝っていた。
「僕はこっちを行く」
「では私は反対の方から。お気をつけて」
馬を蹴り、ペスロと分かれた。
広い村ではない。
店屋が並ぶ中心部を過ぎれば、いくつもの起伏が連なり、小高い丘と草原と、所々に林がある。
馬を走らせている道の左側に目をやると、草原がずっと続いたその果てに黎明の色の空の始まりがあった。
美しいその風景に、グウィディウスは思わず目を細めた。
生死すらわからないまま、探し求めたガレベーラにもうすぐ手が届くかもしれない。
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