3.騎士団

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 宿を出た時はまだ薄暗いと感じたのに、みるみるうちに、辺りは明るくなっていた。 「家がまばらになってきたな」  しかし、村のはずれといっても、どこがリビの村の端なのかわからない。  振り返ると来た道がずっと後ろに続いていた。  あの丘まで行って引き返そうと決め、ゆるい坂の上まで馬で駆け登る。  いっそう広く景色が見渡せる場所で、前進を止めるべく、グウィディウスは馬上で体を引きかけた。  と、牛を世話する人がいた。  丘の下の草原に立つ小屋の前で、牛に井戸の水を飲ませているのは、とても小柄な少年だった。  グウィディウスは駆あしから速あしに馬をゆるめる。  その姿に、目がくぎ付けになったまま、ゆっくりと馬から降りた。  まだ少年からはずいぶん遠く、気づかれてはいない。  緊張のあまり、指先がわかるほどに冷たくなっていた。  その少年のもとへ吸い寄せられるように一歩を踏み出したとき、はっと我に返り、グウィディウスは近くの木に馬を繋いだ。  見つからないよう気を配ったものの、辺りは広大すぎて、グウィディウス一人の歩みなどまったく目立たなかった。  やすやすと、少年を近く眺める場所までやってこれた。  少年は、牛の身体をブラシでかいてやり、傍らにいる山羊を撫で、草を食ます。そして、だんだんと昇ってくる朝日をしばらく向いていたが、やがて小屋の中に牛を連れて入った。  茫然と、そこに立ち尽くしていたグウィディウスは、後ろからの気配に全く気付くことができないでいた。  草をかき分ける人為的な音がしたかと思うと、声をかけられる。  いつの間にか、ペスロもここを見つけたようだった。   「……あれは、ガレベーラ様ですか」  振り返りもせず、肯定も否定もしなかった。  色の褪せた粗末な服を着て、瞳の色も髪の色も遠くてわからない。  デヴンが言ったように帽子をかぶり、長い前髪のせいで顔も、その表情も窺うことはできなかったが、小さな頬は黒く汚れていた。  しかし、グウィディウスは、その姿かたちを彼女のものだと確信していた。    今のガレベーラをグウィディウスは知らない。  何があったのかもわからない。  けれど、ガレベーラは牛や山羊と、喜びの朝を迎えているように見えた。  新しい陽を浴びるように、朝日に向かい、「朝が来たよ」と、おそらく笑って、語りかけているに違いないと思った。  少なくとも、グウィディウスの知るガレベーラは、そういう令嬢だった。
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