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三年前、故郷に帰る子どもたちの馬車にガレベーラが紛れ込んでいたことがわかるや、人買いはガレベーラを花街に売ろうとした。
ガレベーラは逃げ出した。必死だった。
体を売ることも、死ぬことも、やむを得ないと受け入れていたときもあったはずなのに、ラナンとペルラを置いてきたその時には選択肢は『生きる』、ただ一つだった。
生きて、必ずまた二人に会う、と。
逃げ出したのが、一体どこの場所だったか覚えていない。そもそも、どこであるかなど知りもしない。そこからも、どこをどう歩いたか記憶にない。
とにかく必死で、足をただひたすらに右、左と順番に前へ出し続けた。
何日も飲まず食わずだった。
見かねた親切な人に、馬車や荷車に乗せてもらえたこともあった気がする。
それがどこの誰だったかなどはもちろん、ろくに礼も言えないまま、最後は行き倒れていたところを、通りがかった村の教会の神父に拾われた。
貧しい教会だった。
ここにも五人のみなしごがいて、ガレベーラは数か月の間、その子たちと一緒に世話になった。
ラナンとペルラをあの階段下に置いてきたまま、自分だけ食事と寝床があることに悩み、自分を責めた時期もあった。
それでも、神父に、今はいつか二人を迎えにいくための準備の時間なのだと導かれるうちに、ガレベーラはまた、たくましく生きるようになった。
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