269人が本棚に入れています
本棚に追加
騎士の顔は逆光でよく見えなかったが、かつてのガレベーラに騎士団員の知り合いがいた記憶はない。そもそも、貴族出身で騎士になるような子息はあまりおらず、いるとしても、こんな地方に遠征するような実部隊にはいない。
それでも、王城に出入りがあるともなれば、顔見知りがいてもおかしくはない。
しかし、不安は一晩だけだった。
騎士団は、もう次の日の朝早くに出立したという。
騎士階級以上の誰かと話をするのは、カトル家を追い出されてからはじめてのことだった。
またとない機会だったのかもしれない。
騎士に助けを求めれば、何かが変わったのかもしれない。
それでもガレベーラはそうせず、恐れたのは、ガレベーラ・カトルがここに生きているのを誰かに知られることだった。
それはつまり、すでにガレベーラは令嬢ではなくなっていた。
もうこの村の、『ギー』なっていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!