4.牛飼い姫

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「昨日、見たわよ。仕事をさぼって休憩していたでしょう」  ガレベーラが屋敷の掃除をしていると、廊下に立ちはだかる者がいた。  この屋敷の夫婦の娘で、名をカシアという。  年のころはガベレーラよりも三つほど下だ。  おそらく、街中でイオと話をしていたことを言っているのだろう。 「お母さまにいいつけてやるからね」 「申し訳ございません」  ガレベーラは頭を下げる。 「ああ、そうだ。明日は西都で市の出る日だから出かけて、たくさん素敵なものを買うつもりなの。あんたも荷物持ちとしてなら連れて行ってあげてもいいけど」 「今の時期は乳の出る牛がおりますので、私はそれを売りに行かなければなりません。せっかくですがお供はできません」 「なによ。ついてくるならドレスの一つでも買ってやろうかと思ったのに。あ、あんたは男だもの、着れないんだったわね」  ガレベーラは、ため息をつきたくなるのを必死に堪えた。 「失礼します」とカシアをよけて、掃除の手を再開させる。  日々の家事はたいして苦ではない。ただ、屋敷に入るとカシアがいるので憂鬱だった。 『新しいドレスを誂えた』 『新作の帽子を買ってもらった』 『おなかがいっぱいで全部食べられない』 『甘いお菓子をたくさんもらった』 『パーティーで素敵な男性と知り合った』 『西都で一番の金持ちの家の息子と結婚の約束をした』  カシアの自慢話はきりがなく、それ以外にもガレベーラの言動に難癖をつけてくる。  かつての令嬢としての暮らしていたときの着るもの、持ちもの、生活とカシアのそれは比べ物にならないにしても、この村では十分に金持ちの部類である。  
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